魚油サプリメント(フィッシュオイル)の摂取で死亡率や心血管死亡リスクが低下する!?
今回取り上げる論文はコチラです。
魚油の代表はDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)
ちょっとその前に、、、魚油の油ついてお勉強をしましょう。
魚の油は脂肪酸の一種です。脂肪を構成している要素である脂肪酸は、分子の構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸は肉や乳製品に含まれる脂であり、動脈硬化や心血管疾患の発症リスクを高めると言われています。一方、不飽和脂肪酸とは植物油や魚の油などに含まれていて、身体にとって有益な作用がある脂肪酸であると言われています。
魚の油には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が含まれており、オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)に分類されます。これらは動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用を持っています。
ただし、熱や光、空気で酸化しやすく、過酸化脂質になるので注意が必要です。
高温で調理すると大気中の酸素と反応し過酸化脂質となるので、食物として摂る場合、揚げ物や炒め物よりドレッシングなどに向いています。
DHAやEPAは血液中の中性脂肪を減らすとも言われていますが、血液中にオメガ3脂肪酸が多い人は心血管疾患を発症しにくいという論文がいくつか出ています。しかし、不思議な話ですよね、、、DHAやEPAを摂取しただけで血液中の脂肪が減って、その脂肪はどこに行くのだろう…。明確なメカニズムは明らかになっていませんが、オメガ3脂肪酸には血管をしなやかにして拡張させる働きがあると分かっています。
魚油サプリの摂取によって、全死因死亡率と心血管疾患死リスクを低下させる
研究内容
- 2006~10年にUK Biobankに登録された参加者のうち、心血管疾患、悪性腫瘍(がん)を有していない40~69歳の男女42万7,678例
- 2018年末まで追跡調査を行い、全参加者は、魚油を含むサプリメントの常用に関する質問票に回答した。
- 主要評価項目は全死因死亡、心血管疾患死亡、心血管疾患イベントとし、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。
研究結果
- ベースラインで42万7,678例中13万3,438例(31.2%)が魚油サプリメントを常用していた。
- 非常用者に対する常用者の多変量補正ハザード比(HR)は、全死因死亡が0.87(95%信頼区間[CI]:0.83~0.90)、心血管疾患死亡が0.84(95%CI:0.78~0.91)、心血管イベントが0.93(95%CI:0.90~0.96)であった。
- 心血管イベントに関しては、高血圧症を有する参加者においてこの関連性はより強い傾向があった(交互作用p=0.005)。
魚油サプリメントの摂取によって、全死因脂肪・心血管死亡が低下する
しかし、今回の研究では魚油サプリメントの摂取によって、全死亡、心血管死亡が低下するという結果が証明されたのです。
ただ、注意しなければいけない問題点も、この研究結果にはあります。
この研究では、魚油サプリメントの容量、服用回数、形状、服用期間などが明らかになっていません。この点はもう少し考察を踏まえる必要がありそうです。
読者の皆さんで、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞の既往、脳卒中などの心血管疾患を罹患している方は、魚油サプリメントを服用する前に、病院の主治医の先生に摂取していいかどうか一度お伺いしてくださいね!