サプリメントを飲んでも長生きしない!?
以前、このブログでも『サプリメントに心血管疾患を予防する効果は期待できない』という、サプリメントにnegativeな研究論文をご紹介しました。
が、、、今回はサプリメントに関する、もっと衝撃的な論文をご紹介します。
長生きすることを期待してサプリメント(栄養補助食品)を摂取する人も多いと思いますが、その効果はそれほど期待できないかもしれません・・・。
こんな研究結果を、米タフツ大学准教授のFang Fang Zhang氏らが発表しました。*1
この研究は、米国国民健康栄養調査(NHANES)から1999~2010年のデータと死亡記録(National Death Index)データを関連づけて分析したもの。過去30日間のサプリメントの使用状況と普段の食事内容に関するアンケートに回答した20歳以上の米国成人3万899人を対象に、食品およびサプリメントからの栄養素の摂取量と死亡率との関連を前向きに調べました。
その結果、研究対象者の特徴として
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半数以上が1種類以上のサプリメントを摂取
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3分の1以上はマルチビタミンを摂取
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サプリメントの摂取は、特に女性や白人、教育レベルが高い人、高収入の人で多く見られ、健康的な食生活を送り、活動的な人が多い傾向が見られた。
サプリメントの摂取と長寿との関連性はない!
約6.1年追跡した結果、全般的なサプリメントの常用と死亡率との間には関連は見られなかった。
栄養素別に考えると、ビタミンA、ビタミンK、マグネシウム、亜鉛、銅を適度に摂取すると、全死亡率または心疾患や脳卒中などの心血管疾患による死亡率は低下することが示された。しかし、これらのリスク低減効果は、栄養素を食品から摂取した場合に限られることも分かった。
さらに、カルシウムの過剰摂取は、がんによる死亡リスクの増加と関連することも示された。こうした死亡リスクの増加は、食品からではなく、サプリメントからの摂取(1,000mg/日以上)によるものである可能性も示唆されたという。
また、カルシウムサプリメントの過剰摂取は心筋梗塞の発症を増加させるとの研究結果も出ています。*2 *3
サプリメントから栄養素は摂れない!?
驚愕の結果ですよね・・・!?
サプリメントからビタミンA、ビタミンK、マグネシウム、亜鉛、銅をの摂取しても、死亡率や心血管疾患による死亡率は低下しないという驚きの結果。
結局、栄養素は食品から摂取しなければ、健康を維持することが出来ないと解釈することもできます。
骨粗鬆症予防目的で、カルシウムのサプリメントを常用されている方も多いと思います。しかし、カルシウムサプリメントの過剰摂取(1日1,000mg 以上摂取)が、がんによる死亡リスクを上昇するというという恐ろしい結果が示されました。
サプリメントは栄養を補給する食事の代替え品にはなれない!!
一般にサプリメントは健康の増進や維持に有益と考えられていますが、今回の結果からは、健康な人ではサプリメントによるベネフィットは得られないことは明らかです。
“サプリメントは栄養バランスに富んだ食事の代わりにはならない”という事ですね。
また、栄養素を食品から摂取した場合とサプリメントから摂取した場合で有益性に差が出た理由は明らかになっていないませんが、この点について、米タフツ大学准教授のFang Fang Zhang氏は、「食品から摂取した場合には、身体が栄養素の吸収を調整したり、制限したりできるのに対し、サプリメントでは、こうしたコントロールができないためではないか」と説明しています。
サプリメントを摂るのは全部やめた方がいいの!?
米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの管理栄養士であるSamantha Heller氏は「一種類の栄養素を摂取したからといって健康上の問題が解決するわけではないが、状況によっては栄養素の補充が必要なこともある」と指摘しています。
その一例として、完全採食主義者(いわゆるヴィーガン)では、たまごを含む動物性蛋白質を一切摂らないので、ビタミンB12やビタミンD、オメガ3脂肪酸など特定の栄養素が不足しがちです。
また、ビタミンD欠乏症の増加は世界的にも問題となっているが、その必要摂取量については専門家の合致した意見はまだ出ていないそうです。
病気を予防したい! 健康になりたい! 長生きしたい!
と誰しも強く思います。基本的な食生活がカオスになっている状態で、「お金をかけてサプリメントに頼る」、あるいは「サプリメントで補おう」と考えるのは短絡的すぎるかもしれません。
当院の院長「幡芳樹先生」だって、毎日の外来と心臓カテーテルをこなすための強靭な肉体と精神力を養う目的で、毎日暗い夜道をランニングしているんですよ!
皆さま、夜遅く、荒い呼吸で後ろから誰かが近づいてくる~~!!なんて思ったら、幡院長かもしれません(笑)
*1:Annals of Internal Medicine」4月8日オンライン版