現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

本当のところ、卵は何個食べても大丈夫なの??

皆さん、卵は一週間で何個食べますか?

Sサイズを毎日?

それとも、Lサイズを毎日??

以前、卵を食べると、悪玉コレステロール(LDL)が上がる~。なんてい言われていましたが、一方で、卵はいくらとっても問題ない。タンパク質を接種するには卵が一番。卵は最強!と、巷では言われていて、筋肉自慢のボディービルダーは、1日3個食べる!なんて方もいらっしゃるのですよ・・・。

 

でも、卵って、本当にいくら食べても大丈夫なの?

実際のところ、卵って健康にいいの?

なんて、思った事ありませんか?

 

その『卵、何個食べたらOK?』論争に決着をつけるかもしれない論文を見つけました。その論文は“JAMA”という、世界五大医学雑誌のひとつで、国際的に非常に影響力が強く信頼性も高い学術誌のひとつです。この論文に掲載されたという事実は、この研究の信憑性の高さが伺えます。

 

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米国成人において、食事性コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患(CVD)発症および全死因死亡リスクの上昇と有意に関連していることが確認された。米国・ノースウェスタン大学のVictor W. Zhong氏らが、Lifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを用いた解析結果を報告した。コレステロールは、ヒトの食事における一般的な栄養素で、卵は食事性コレステロールの重要な源であるが、食事性コレステロール/卵の摂取量がCVDおよび死亡と関連しているかどうかについては、なお議論が続いている。著者は今回の結果について、「食事ガイドラインの作成・改訂の際に考慮されるべきである」とまとめている。JAMA誌2019年3月19日号掲載の報告。

6コホート2万9,615例、食事性コレステロール/卵の摂取量とCVD発症/死亡リスクの関連を評価

 研究グループは、1985年3月25日~2016年8月31日の期間に収集された、米国の6つの前向きコホート研究における参加者個々のデータを統合した。自己報告の食事摂取に関するデータは、標準的プロトコルを用いて調整し、食事性コレステロール(mg/日)または卵の摂取量(個/日)を算出した。

 主要評価項目は、人口統計学的、社会経済的および行動的要因を調整した、CVD発症(致死的/非致死的冠動脈心疾患・脳卒中心不全・他のCVD死亡の複合)と全死因死亡に関する全追跡調査期間にわたるハザード比(HR)および絶対リスク差(ARD)で、コホートで層別化した原因別ハザードモデルおよび標準比例ハザードモデルを用いて解析した。

摂取量の300mg増加で、CVD発症と全死因死亡リスクが上昇

 本解析には合計2万9,615例が組み込まれ、平均[±SD]年齢はベースライン時51.6±13.5歳、1万3,299例(44.9%)が男性で、9,204例(31.1%)が黒人であった。

 追跡期間中央値17.5年(四分位範囲:13.0~21.7、最大31.1)において、心血管疾患イベント発症が5,400例、全死因死亡が6,132例認められた。

  • 1日当たりの食事性コレステロール摂取量が300mg増加した場合、心血管疾患発症リスクは3.2%上昇し、全死因死亡は4.4%上昇するという有意な関連が認められた。
  • 1日当たりの卵の摂取量が半分(2分の1個、卵1個を3~4回/週または3~4個/週)増加した場合でも、心血管疾患発症リスク、および全死因死亡有意な関連が認められた。
  • 食事性コレステロール摂取量を補正後は、卵の摂取量と心血管疾患発症リスク、および全死因死亡との間に、有意な関連は確認されなかった。

 

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血中の悪玉コレステロール値が高いと、心血管疾患(冠動脈疾患、心筋梗塞脳卒中など)のリスクが高いという事実は、専門家の間でも概ね一致した見解です。

だったら、どうして“卵はいくら食べても大丈夫!!”という、風潮が沸き起こったのでしょうか?

これは、アメリカ心臓病学会/アメリカ心臓協会(ACC/AHA)が、『コレステロール摂取量を減らして血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せない』として、「コレステロールの摂取制限を設けない」と見解が出されました。時を同じくして、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、健常者における食事中コレステロールからの摂取量と血中コレステロール値の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限値を設けなかった。これらのことから、日本人はコレステロールをいくら摂取しても良いという錯覚に陥ってしまったと考えられます。

 

この混乱を受け、2015年5月1、日本動脈硬化学会はコレステロール摂取量に関する声明を発表しています。

「肥満、メタボリックシンドローム2型糖尿病、高トリグリセライド(中性脂肪)血症の方は、摂取エネルギー(カロリー)を制限する必要があるが、高LDLコレステロール血症の方は、より飽和脂肪酸コレステロールの摂取量に注意する必要があるということである。食材の選び方や献立の工夫については、日本動脈硬化学会の脂質異常症治療ガイド2013年版を参照していただきたい[6]。動脈硬化を防ぐには、高LDLコレステロール血症だけでなく、血圧や血糖値のコントロール、禁煙や運動など包括的な生活習慣の改善を介した予防が大切である。」

 

www.j-athero.org

 

 


簡単にまとめると、コレステロールの摂取量と血中のコレステロール値がそれほど相関しないことなんです。だから、一般市民の間では、コレステロールの多い卵をたくさん摂取してもコレステロール値が上がらないから大丈夫~!という結果に至ってしまったみたいです。でも、本研究の結果から、血中コレステロール値を悪化させなくても、コレステロールの多い卵の摂取は心疾患リスクだという事です。採血した血液データで“コレステロールが高くないから大丈夫!”とは、言えないという事になります。

また、今回ご紹介した論文で記述されている卵は1個50g。これは、日本でいうMサイズになります。しかし、流通量が多く我々日本人が普段摂取している卵は1個60gのⅬサイズ。コレステロールの摂取量に関する研究データでは、実際よりも過小評価されている可能性があるかもしれません。(中くらいの卵1個には、200~250mgのコレステロールが含まれています)

 

  1. 卵を摂取すればするほど、容量依存的に心血管疾患リスク、全死亡のリスクが増える。
  2. 「卵を1日何個までだったら食べても大丈夫…」という結論ではなく、食べれば食べた分だけ疾病のリスクが増えるということ。
  3. 卵の摂取量が増えたからと言って、またコレステロールの多い食事を摂取したからといって、血中コレステロール値が上昇するとは限らない。
  4. 本研究は、白人、黒人を中心とした研究であり、日本人に当てはまるかどうかは未解決。

 

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結局、「じゃあ、卵を食べるな!って事かよ~!!」と思われるかもしれませんが、そうではありません。「食品から摂取するコレステロールは身体的悪影響はない」という、昨今の風潮に風穴をあけた研究であると思います。

でも、皆さんも心のどこかで疑問に思っていたはずです。

“世間では、卵は何個食べても大丈夫!って言ってるけど、本当なの???”

その通りです!

食品をバランスよく食べるのが一番であり、無茶な偏った食生活は控えたほうが良いです。そんな警笛を鳴らしてくれた、論文ですね。

 

私の尊敬する、「美しすぎる管理栄養士☆」さんからも、卵の摂取におけるアドバイスを頂いたので、ご報告しますね!

『 食品からのコレステロールが血中コレステロールにさほど影響は無いとしながらも、卵を食べても1日にせいぜい1~2個程度までに留めています。それは、スポーツ栄養に特化していたり、ボディメイキングにだけ特化して考え、ササミや卵だけ食べているような方であればいいのかも知れませんが、病気の方、一般の方はたいてい卵以外にもタンパク質を食べているのが普通で、かつ卵が高栄養のため1日に何個も食べてしまうと脂質量だけでなく微量元素等も日本人の食事摂取基準で定められた上限量を越えてしまう』

と、仰ってます。納得させられますね~☆彡