現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

血圧が高いと脳卒中、冠動脈疾患で死亡するリスクが高まる!

“突然死”と聞くと、恐ろしいですよね?

この、“突然死”は全死亡の10%と言われています。しかも、「突然死”のうち、30%~40%は冠動脈疾患が原因である」という事実を知ったら、皆さんどう思われすか?

諸外国と比較して、日本は依然として低い冠動脈疾患発症率ではありますが、肥満や不活発な生活習慣の蔓延による耐糖能異常、脂質異常の割合の増加により、男性、特に都市部男性における冠動脈疾患や脳卒中などの発症率の増加が示唆されているのです。

 

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今回は、血圧の数値によって、脳卒中および冠動脈疾患に罹患して死亡するリスク“生涯リスク”を層別化してみました。

生涯リスク(lifetime risk:LTR)とは、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示します。

アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease:CHD)死亡の生涯リスクを算出した研究は存在していませんでした。

今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡および冠動脈疾患死亡の生涯リスクが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告されました。

本研究で算出された生涯リスクは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう考えられれます。*1

 

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生涯リスクとは・・・
人の一生を通じて特定の因子に基づく健康障害等が発生する潜在的可能性をいう。通常は、がん、心不全脳卒中のように近い将来に発生する確率は高くないが、発生した場合に影響が重大な、または生命に危険をもたらすような疾病を対象とする。こうした疾病を引き起こす因子は生活習慣、居住環境、労働環境などさまざまである。喫煙や高線量の放射線被ばくなど、各種の因子について生涯リスクの大きさが定量化されつつあるが、複合的な要因で発生する疾病もあり、まだその影響が十分に解明されていない因子も多い。例えば、放射線被ばくは低線量であっても発がんに関する有意な生涯リスクを持っている(確率論的には閾値は存在しない)ため、集団被ばく線量の大きさを管理する必要があるとの考えに基づき安全規制が行われているが、低線量の放射線被ばくに起因する発がんリスクについてはまだ明確には分かっていない。
 
 
 
コホート研究のメタ解析結果
  • メタ解析には、13コホート、10万7,737人の日本人(男性42.4%、平均年齢55.1歳)が含まれた。
  • 平均追跡期間15.2±5.3年(155万9,136人年)の間に、脳卒中で1,922人が死亡し、冠動脈疾患で913人が死亡した。
  • アウトカム以外の死亡を競合リスクとして調整後、35歳時点の脳卒中死亡およびCHD死亡の10年リスクは、それぞれ1.9%以下および0.3%以下であった。
  • 35歳時点の脳卒中死亡生涯リスク(男性/女性)は、至適血圧群で6.1%/4.8%、正常血圧群で5.7%/6.3%、正常高値血圧群で6.6%/6.0%、I度高血圧群で9.1%/7.9、II度高血圧群で14.5%/10.3%、III度高血圧群で14.6%/14.3%であった。
  • 冠動脈疾患死亡生涯リスクも、血圧の上昇とともに高値を示したが、脳卒中死亡生涯リスクよりも低かった(7.2%以下)。
  • 脳卒中または冠動脈疾患による死亡の生涯リスクは、基準年齢が若年ほど高値を示した。

 

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血圧が高いほど、冠動脈疾患や脳卒中が発症して死亡するリスクが高まる!!

  1. 至適血圧(収縮期血圧120未満かつ拡張期血圧80未満)において、死亡リスクが一番低くなり、血圧区分の上昇とともに死亡リスクは増加している。

  2. 血圧上昇による冠動脈疾患死亡リスクの上昇は、若い年齢層において顕著に認められた。

  3. 高血圧の危険因子があるほど、冠動脈疾患発症しやすいことが分かった。

 

 これは、冠動脈疾患や脳卒中を予防するには、30代からの血圧の管理がとても重要であるといことを示してくれた研究であると考えられます。

 

 高血圧の診断は診察室や健診会場などで測定された血圧値に基づいて行われることが多いですが、診察室以外で測定した血圧が常に正常域である状態を白衣高血圧という。逆に、診察室での血圧が正常域でも、早朝や勤務中、夜間あるいは就寝中など診察室以外の血圧が高い状態を仮面高血圧(隠れ高血圧)といいます。

 研究によると、心血管疾患による死亡リスクの上昇は、仮面高血圧で認められたが、白衣高血圧では認められなかったそうです。白衣高血圧、仮面高血圧の診断だけでなく、診察室血圧の受診間変動や家庭血圧の変動も心筋梗塞を含む循環器疾患のリスクを高める可能性があるため、診察室血圧だけでなく家庭血圧を測定する事が重要です。

 診察室以外にも、起床時、仕事中、就寝前等において、血圧を記録し、その変動を確認してみるのも大切ですね!

 

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心血管発症のリスクには、糖尿病(ヘモグロビンA1c、血糖値)や脂質代謝異常(コレステロール値)などもありますが、これらは病院等で検査する必要性があるため、ご自身での管理は難しいと考えられます。一方、血圧の測定はご自宅で簡単に行う事ができます。非常に管理が簡便で生活習慣改善へのステップアップのひとつでることは、間違いないです。ご自身の健康管理の目的で、血圧測定を習慣にしてみては如何でしょうか??

 

 

*1:Hypertension誌2019年1月号