放っておくと危険な痛風!! ~風が吹いても痛いなら、病院に行きましょう~
皆さん、“痛風”という病気をご存知ですか?
この病気は、その名の通り、「風が吹いただけで、痛い!!」病気なんです。
痛風とは
血液中の尿酸値が上昇(高尿酸血症)し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。この結晶を白血球が処理する際、痛風発作(急性関節炎)が発症します。高尿酸血症状態が続くと尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全となります。
高尿酸血症の原因は様々です。腎臓から尿酸を排出する機能が低下したり、暴飲・暴食、肥満、激しい運動などが原因になると考えられています。降圧利尿剤などの薬物も原因になることがあります。
痛風になると、足の親ゆびのつけ根、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作が起こることがあります。耳介に痛風結節や尿路結石が出来ることもあります。
生活習慣病(肥満や高血圧など)を合併することも少なくありません。痛風発作を何度か経験している人は、発作の前兆(違和感)を感じることがあります。
痛風を予防するには、まず食生活の改善!
アルコール(とくにビール)、肉類(とくに赤肉、ジビエ、内臓)、魚介類(貝、大型海水魚)、フルーツジュース、高濃度果糖液の入った飲料などの摂取は痛風のリスクを高めるそうです。(表1参照)
一番右枠にある、“相対危険度”。この数値が高いほど、痛風を発症しやすいと考えられます。
食生活習慣の改善としては、「体重減少」が痛風のリスクを減少させると言われています。また、果糖液(ジュース)、プリン体を多く含む動物性蛋白、とくにビールを含むアルコールを避けるべきであるとされています。
一方で、プリン体を多く含む野菜は痛風のリスクを上昇させないといわれていて、野菜や低(無)脂肪の乳製品の摂取が推奨されています。
病院で行う痛風の治療方法
痛風は関節の激痛を伴う事があります。このように激痛が続いている状況では患者さんの生活の質が低下してしまいます。歩くのが億劫になり、外出や仕事にも影響を与えてしまします。
ですので、まずこの関節の痛みをとることから治療はスタートします。
- 第1選択は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)です。歴史的にはインドメタシンが好んで使用されていたのですが、他のNSAIDsに比べて効果があるという科学的根拠はありません。
- 非ステロイド抗炎症薬が使用できない場合、あるいは非ステロイド抗炎症薬では効果を発揮できなかった場合、副腎皮質ステロイドホルモンを使用します。
副腎皮質ステロイドホルモンは短期間で終了すると再燃がありうるため、10~14日で漸減していきます。 - 痛風発作の前兆期にはコルヒチンを用います。やや高価であり、鎮痛効果はなく、発症後72~96時間経過していると効果に乏しいとされます。
- 再発予防の治療については、痛風の既往があり、かつ年2回以上の発作(腎機能低下患者では年1回以上)、痛風結節、または尿酸結石の既往がある場合には尿酸を下げる治療を考慮します。症状がなくても発作後3~6ヵ月は治療を継続し、症状がみられる場合には引き続き継続します。
- 日本での目標値としては尿酸値6mg/dL以下に維持するのが望ましいとされています。
痛風は、腎臓病や糖尿病、がん、睡眠時無呼吸症のリスクを上昇させる可能性があるとの報告もされているんですよ!
痛風の患者さんが冠動脈疾患を発症すると、心血管疾患の予後が不良になる可能性があるという研究報告
心臓専門医であるPagidipati氏らは今回、1998~2013年に同大学医療センターで閉塞性冠動脈疾患により心臓カテーテル治療を受けた患者1万7,201人のデータを分析した。対象患者のうち1,406人(8.2%)は研究開始時に痛風に罹患しており、心血管リスク因子に対する治療を受けていた。
6.4年間(中央値)の追跡の結果、冠動脈疾患患者は心血管リスク因子への積極的な薬物治療を受けていても、痛風があると心血管疾患の転帰が不良となり、死亡とも関連することが分かった。また、研究開始時に既に痛風に罹患していたか、追跡期間中に痛風を発症した患者は、痛風のない患者に比べて心血管疾患による死亡や心筋梗塞または脳卒中のリスクが15%高いことが明らかになった。さらに、痛風のある患者では、そうでない患者に比べて心不全により死亡するリスクが2倍に上っていたという。
*1
結果をまとめると、以下の通りです。
- 冠動脈疾患患者さんは、積極的な治療を受けていても痛風があると心血管疾患の予後が不良となり、死亡とも関連する。
- 通風を発症すると、心血管疾患による死亡や心筋梗塞、脳卒中のリスクが上昇する。
- 痛風のある患者さんは、心不全により死亡するリスクが高い。
という事なのです。
痛風が心血管疾患患者さんの死亡リスクを高める!
痛風のある冠動脈疾患患者さんは、たとえ標準的な治療を受けていても心血管疾患を発症するリスクが高いことを医療従事者は知っておくべきですし、患者さん自身もそうしたリスクが存在することを認識しておくのが大切だと思います。
痛風が心血管疾患リスクを高める理由は明らかにされていませんが、酸化ストレスや炎症の亢進の関与が考えられます。一般に、『炎症レベルが高いと心血管疾患リスクも上昇する』ことが知られており、痛風は急性の炎症性疾患と特徴づけられると考えられるからです。
痛風は全身病である!
「痛風は単に関節の疾患ではなく、身体全体に炎症を引き起こし、心臓などさまざまな臓器にも影響を及ぼす」と研究者らは警告しています。また、痛風の症状が頻繁に出ないからといって、軽視することは非常に危険です。症状が出るのが2年一回程度なので治療の必要はないという患者さんもいらっしゃいますが、痛風を治療しないで放置すれば心血管の状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
『風が吹いただけで痛い病気、痛風』。症状が出ないからと言って放置しているのは、他の病気(冠動脈疾患、脳卒中、がん、糖尿病、腎疾患)を発症するリスクもあります。さらに、これらの疾患の予後を不良にさせる可能性があるのでとても危険な病気なのです。痛風治療は途中でリタイアせず、医師の指示のもと服薬を行いながら、食生活の改善を行うのがベストであると考えます。
*1:[2018年8月17日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.