降圧薬は起床時よりも就寝時に服用した方が心筋梗塞や脳卒中を減らせる!?
皆さん、こんにちは~
季節はもう冬。。。特に起床時、お布団からでるのが億劫になる時期ですよね。
でもこの起床時(早朝)、実は突然死が非常に多いという事実、ご存知でしたか?
アメリカのミュラー先生の研究結果(1989年)では、朝6時ごろに心筋梗塞が増え、午前9時~11時にかけてピークを迎えると報告されてます。しかも、朝方には心筋梗塞のみならず脳卒中も多いのです。要するに、“朝方は身体を循環する大事な血管にダメージが起きやすい”ということなのですよね。
どうして早朝に心筋梗塞や脳卒中が多いのか!?
その理由のひとつに、血圧が関係しています。
人間の血圧の日内変動は、眠りに入る夜間は低下して、朝目覚める明け方から上昇します。活動している日中は血圧は高く維持され、夕方以降からは血圧が下降して眠りへと入っていきます。早朝に血圧が高くなるのは、「レニン・アンギオテンシン系」というホルモンの分泌が活発になったり、交感神経が働き出して血管を収縮させるからです。さらに朝は、睡眠中には水分を摂っていない事や、睡眠中に汗をかくことで血管内が脱水傾向に傾き、血液が固まりやすく血栓ができやすい状態になっているのです。
そんな要因が相まって、心筋梗塞や脳卒中が多いと予測できます。
ここで問題となるのは、早朝に特に血圧が高くなる『早朝高血圧』です。
そして重要なのは、早朝の血圧上昇をいかに予防できるか!?なのです。病院の外来を受診して血圧を測定する時間帯は、、、日中ですよね? つまり、早朝高血圧には医師でも中々気付くことが出来ないのです。ご自身で起床時の血圧を測定して頂くことも重要ですが、高血圧でお薬を飲んでいる方には、目から鱗の論文を発見したのでご報告しますね。
降圧薬(血圧を下げる薬)は、就寝時に服用する方が良い!?
スペインにあるビーゴ大学アトランティック研究センターのRamón Hermida氏らが報告した研究結果によると、「降圧薬を就寝時に服用すると、起床後の服用に比べて心筋梗塞や脳卒中、心不全の発症リスクやこれらの心血管疾患(CVD)で死亡するリスクが大幅に低い可能性があるという 」というのです。*1
この臨床試験は、「Hygia Chronotherapy Trial」と呼ばれるもので、2008年から2018年にかけて、スペイン北部在住の18歳以上の高血圧患者1万9,084人(男性1万614人、女性約8,470人、平均年齢60.5歳)を中央値で6.3年間にわたり追跡。
試験では、対象患者を、1種類以上の降圧薬を全て起床後に服用する群(9,532人)または就寝時に服用する群(9,552人)にランダムに割り付けて比較した。試験期間を通して定期的に血圧を測定したほか、年に1回は2日間にわたって携帯型の自動血圧計を装着してもらい、自由行動下の24時間血圧(ABPM)も測定した。
その結果、
- 降圧薬を起床後に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では心血管疾患による死亡リスクは56%有意に低かった。
- 圧薬を起床後に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では心筋梗塞リスクは34%、血行再建術の施行リスクは40%、心不全リスクは42%、脳卒中リスクは49%それぞれ有意に低かった(P<0.001)。
- これらのイベントを合わせた複合アウトカムの発症リスクについても、就寝時に服用した群では45%有意に低かった(P<0.001)。
- これらの結果は、性や年齢、糖尿病や腎臓病の併存といったリスク因子の有無にかかわらず一貫してみられた。
通常、ほとんどの患者さんは降圧薬を起床後に服用しています。けれど、この起床後のタイミングが最適だという臨床試験はひとつもありません。また、降圧薬の服用に最適なタイミングについて言及したガイドラインすら今のところありません。
今回の研究では、就寝時に降圧薬を服用した群の方が睡眠中の血圧が優位に低かった。このことから、『就寝前の降圧薬の服用で夜間の血圧を良好に維持する事が可能であり、ひいてはその良好な血圧の維持が心血管発症リスクを低減させる』ことに寄与したと考えられます。
もちろん、医師に指示された降圧薬の用量を適切に服用し、飲み忘れを防ぐことは不可欠ですが、降圧薬を飲むタイミングを考えてみるのも一つの方法かもしれません。
ただし、今回の試験に参加した高血圧患者は全員、日中に活動し、夜は眠るという生活スタイルの白人でした。このことから、「夜勤している人や他の人種でも同様の結果が得られるかどうかは不明だ」と研究員たちは話しています。
降圧薬の服用については必ず医師に相談を!!
降圧薬の服用は、心血管疾患発症リスクを抑えるためには就寝時がベストだ。という研究結果でしたが、皆さんの自己判断で服用するタイミングを変更してはいけませんよ!
必ず、主治医の先生に相談して、主治医の指示の元にお薬を服用して下さい。
寒くなると、体温を維持しようと交感神経が活発になり血管を収縮させて血圧が上昇します。心筋梗塞や大動脈解離、脳卒中という危険な病気の要因にもなりますので、寒暖差の激しい日常生活には注意しましょうね。
参考文献
https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehz754/5602478
HealthDay News 2019年10月23日
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*1:「European Heart Journal」10月22日オンライン版