現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

ストレスで白髪は増えるのか!?

先日、駅構内のプラットフォームで電車を待っていたら、ある親子がこんな会話をしていたんです。

「んもーーー、太郎君が迷惑かけるから、お母さんの白髪が増えっちゃったじゃないの!?」

私は思ったんですよ、、、本当にストレスで白髪が増えるのか?エイジング加齢だろ、、、子供のせいにするなよ・・・って。という事で調べてみると、興味深い論文が見つかりました~。

 

「髪の毛」の画像検索結果

 

ストレスがかかると白髪が増える

今回参考にした論文は、コチラです。

ハーバード大学幹細胞・再生医学准教授のYa-Chieh Hsu氏らは、マウスを用いた実験を行い、ストレスがかかると白髪が増える機序を解明したそうです。*1

pmc.carenet.com

 

 生物はストレスを感じると、「闘うか逃げるか」(闘争・逃走反応)のどちらかを選ぶよう自律神経が働き、神経伝達物質ノルアドレナリンが産生される。今回の実験では、マウスを物理的、心理的ストレスにさらしたところ、この闘争・逃走反応の一部を担う交感神経系が活性化されて、放出されたノルアドレナリンの影響で、毛包にある色素をつくる色素幹細胞が永続的に枯渇してしまうことが分かった。ストレスで白髪が増えるのは、この機序によるものだ。

Hsu氏らは、このように主張しています。

 

闘争・迷走反応って?

ヒトを含む脊椎動物は、突然の恐怖や差し迫る危険に直面すると、身体に「急性ストレス反応」が起きます。瞳孔は拡大し、鼓動は一気に速まり、発汗が伴い、血圧が上がって呼吸が荒々しくなります。これらは、危機的状況に対応するための体の反応です。

危険から身を守るための防御反応ですが、生命の危険に瀕した時だけでなく、私たちの身の回りで起こる将来のこと、金銭のこと、人間関係のこと、仕事のこと、自分のこと、病気や老化のことなど、悩みや心配ごとがが精神的ストレスとなり、「不安」を引き起こします。このような不安に対しても私たちの身体は、その危機に対して心の準備をするため、防御反応が起こります。

 

 Hsu氏らは、またこのようにも解説しています。

今回、発見したストレスによる身体への悪影響は予想以上だった。マウスに物理的、心理的なストレスを与えてから数日後には、色素幹細胞は過剰に反応した後、全て枯渇してしまった。幹細胞が消失すると色素は再生できなくなる。しかもこのダメージは永続的なものだった。

 

ストレスから自分を守る防御反応が逆に自分の身体に悪い変化を与える 

 私たち人間の身の回りには、数々の不安や悩み、怒り、恐怖といったストレスを日々抱えています。このようなストレスが起因して生じる危険から「体や心を守ろう!」と、自分の身体の組織、器官が敵(ストレス)からディフェンス(防衛)するわけです。ストレスが原因でキリキリと胃が痛くなったり、便秘・下痢になったり、またはストレスで太った、痩せたなど、、、ストレスが原因となって何らかの体の変化が生じることを我々は身に染みて自覚しています。

 今回の研究は、ストレスによって体がどのように変化するかに着目しており、特に毛髪を題材にしたところはとても明快です。何故かと言うと「髪の色素沈着は研究材料として扱いやすいから」です。

 

 今回の研究は、動物実験の結果に過ぎませんが「闘争・逃走反応」といったネガティブな思考が身体や精神に影響を与えていることを示唆しています。本来、闘争・逃走反応を刺激するような急性ストレスは、従来動物が生き延びるために役立つと考えられてきました。しかし、急激なストレスによって幹細胞が消失し、挙句の果てには永遠に失ってしまう・・・という身も蓋もないような結論に至りました。

  けれども、今回のストレス実験は身体に与える影響が『白髪の増加』だけとは限らないと思いませんか?シワ、たるみなど・・・女性が気にしてやまない外見上の見た目や衰えにもストレスが関係しているのかも???

 ストレスが我々の他の臓器や器官に影響を及ぼしている事が否定できなくなってきました。自分を守るための防御反応が、めぐりめぐって自分の身体に悪影響を与える結果となっているのですね。

 

「ストレス フリー」の画像検索結果

 

 心理的、物理的ストレスの悪影響から、どのように身体を守り回復させていくのか?その手段を見つける事が肝要であると思います。

 旅行に行く、温泉に行く、自然中で過ごす、運動する、おしゃべりするなど、ストレスの向き合い方は人によって様々あると思います。現代社会、ストレスを皆無にすることは困難ではありますが、ストレスを受けていると自覚しそれに対応するなんらかの武器があるといいかもしれませんね。

  

 現在、新型コロナの感染拡大の影響で容易に外出できなくなっています。新型コロナによる感染拡大を避ける目的から、外出の自粛、テーマパークの臨時休園、イベント等が続々と中止に至っております。また、国内では消費の落ち込みなど、経済に深刻な影響が出ています。こんな状況ではストレスが溜まる一方ですよね・・・。

 けれど、キャンプなどの飛沫や感染リスクが少ないアウトドアの需要は高まっているそうです。また、宴会の自粛規制は出ていますが、東京都は散策などのお花見の鑑賞は推奨しているそうですよ。

 『ストレスによって、白髪が増える』ということが判明したわけですから、、、私も母への対応には気を付けます。母の白髪が増えたのは、マイケルゆみこが原因なのかも!?

 

参考

[2020年1月23日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.

原著論文はこちら

Zhang B, et al. Nature. 2020 Jan 22.. 

*1:「Nature」1月22日オンライン版