現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

ココナッツオイルは本当に身体にイイのか問題! ~第二弾~

はい皆さん、こんにちは~。

やって参りました、マイケルゆみこがお届けする科学的根拠のあるマニアックな医療ネタ。皆さん、楽しんで頂けていますか?

今回お届けする内容は、前回に引き続き『ココナッツオイルを飲んだら健康になるのか問題!?』

 

前回のココナッツオイルの内容をまとめ

  1. ココナッツオイルは飽和脂肪酸の一種。一方でオリーブオイル、亜麻仁油、魚の油は不飽和脂肪酸である。
  2. 不飽和脂肪酸には、ココナッツオイル以外にバター、肉の脂、ラードなどはなどがある。
  3. しかし、ココナッツオイルの主成分は中鎖脂肪酸。中鎖脂肪酸は消化吸収、代謝が速く、直ちにエネルギーに変換されるため、脂肪として蓄えにくいと言われている。一方、バターや肉の脂などは長鎖脂肪酸が主で、身体の臓器や血管をまんべんなく巡るため、脂肪として蓄積しやすい。

ココナッツオイルが『身体にイイ!』と言われているのは、このような理由からだと考えられます。

 

 

 

『ココナッツオイルは身体にイイ』説が覆えされつつある!!

シンガポール国立大学の疫学分野教授・教務部副部長のvan Dam氏らが、ココナッツオイルについて発表された16件の研究結果を統合して、ココナッツオイルの摂取が心血管疾患リスクと関連しているかの調査を行ったところ、、、

ココナッツオイルには、心血管疾患リスクを増加させる可能性がある低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールおよび総コレステロールの上昇と関連することを見いだした。

という事らしいのです。

 

統合した調査結果をまとめると・・・

  • オリーブオイル、大豆油、キャノーラ油などと比較すると、ココナッツオイルの摂取量増加によってLDLコレステロール値は大幅に上昇。
  • 1日に大さじ3~4杯のココナッツオイルの摂取は、推定10mg/dL(約9%)のLDL値上昇と関連。

要するに、ヒトでの学術研究において、ココナッツオイル摂取が肥満、炎症、血糖、心臓など身体の健康に有益な効果を与える可能性は低い。という事です。

このように、ココナッツオイルを摂取することによる有益な科学的根拠はないので、健康向上を目的にココナッツオイルを積極的に摂取するのは、おススメは出来ない。という解釈が出来ます。

 

ココナッツオイルは中鎖脂肪酸だから健康にイイ!というのは間違い!?

ココナッツオイルの健康上の有益性を主張する支持者は、ココナッツオイルの中鎖脂肪酸に目を付けています。つまり、肝臓に貯蔵されず、素早くエネルギー源となるため脂肪として蓄積しにくいという点。問題はそこなのです!

いくらココナッツオイルの5割を占めるのがラウリン酸(中鎖脂肪酸)であったとしても、ココナッツオイルの約4分の1は長鎖脂肪酸であるパルミチン酸やミリスチン酸です。長鎖脂肪酸を全く含んでいないという訳ではないのです。そう考えると、今回の研究結果も合点がいきます。

長鎖脂肪酸は中鎖脂肪酸と異なり、摂取すると静脈やリンパ管、筋肉、肝臓を巡り全身に運ばれた後、体脂肪として蓄えられる。

 

「ココナッツ」の画像検索結果

 

研究の信憑性を高めるために  、さらに多くのメタ解析を行ってみると・・・

ココナッツオイルに関してより決定的な回答を得るため、van Dam氏や筆頭著者のNithya Neelakantan氏らは、関連する可能性のある873本の論文を確認する調査を実施しました(解析には16本の論文が含められ、それは参加者730人の計17試験に関するものであった)。 

ココナッツオイルに基づく結果を簡単にまとめると

熱帯オイル(ココナッツオイル)非熱帯オイル(亜麻仁油、大豆油)の比較では、

  • 非熱帯オイルであるオリーブオイルや亜麻仁油と比較し、ココナッツオイルは総コレステロール値を14.69mg/dL有意に上昇させた。
  • ココナッツオイルはLDLコレステロール値を10.47mg/dL上昇させ、また高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールを4.00mg/dL上昇させた。
  • ココナッツオイルは、非熱帯オイルと比較し、トリグリセライド値(中性脂肪値)を有意に変化させなかった。

※非熱帯オイルの亜麻仁油や大豆油は不飽和脂肪酸に当たります。

 

ココナッツオイルとパーム油(飽和脂肪酸を約50%含む)が比較では、

 

まとめ

ココナッツ油は非熱帯性の植物油(不飽和脂肪酸)と比較し、体重、腹囲、体脂肪率、C反応性蛋白値(炎症を表す数値)、空腹時血糖値に対し有意な影響を与えなかったらしい。

このメタ解析の結果から考えられることは、「健康向上のためにココナッツオイルを摂取する根拠は存在せず、対してココナッツの摂取量が多くなると、血中LDLコレステロール値が上昇し、心疾患リスクが増加する可能性がある」という事。

心疾患予防の為に、『ココナッツオイルを摂取してね!』とは中々言いにくくなりましたね。それよりは、植物オイルだったら、オリーブオイル、亜麻仁油、大豆油などの非熱帯性のオイルを摂取する方がいいようです。

けれども、ココナッツオイルは何と言っても、あの香りがイイですよね!

食事の風味付けや食感のために控えめに使用する程度だったら問題ないと思います。

 

ココナッツオイル摂取と心血管発生リスクの関連性を調査した研究ではないので、ココナッツオイルを摂っているから心筋梗塞になる!動脈硬化が起こる!とまでは言い切れませんが、ココナッツオイルが心血管疾患の発症リスクを下げる。とは言えないようです。

 

という事で、2回にわたってお届けした『ココナッツオイル問題』如何でしたでしょうか?食事も生活もバランスが大事。とはよく聞きますが・・・。

と言いながら、わたくし、マイケルゆみこは、かなりエキセントリックな人間です(笑)

 

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参照・参考

Van Dam and Sacks have disclosed no relevant financial relationships.

Circulation. Published online January 13, 2020. AbstractEditorial

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