現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

適度な運動が死亡リスクを低下させる!~でも、適度な運動って??~

みなさん、こんにちは!

「運動したほうがいいよ!」「筋トレした方がいいよ!」と頻繁に聞きますが、

ダイエット以外にどんな効果があるの?

って、思った事ありませんか?

 

この疑問を解決してくれる論文を見つけましたので、今回ご報告しますね。

その内容は、有酸素運動や筋トレをすると死亡リスクが低下するという、大きなメッセージを含んでいます。

 

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米国では、「米国人の身体活動ガイドライン2018年版(2018 Physical Activity Guidelines for Americans)」で推奨されている水準で、余暇に有酸素運動や筋力強化運動を行っている成人は、これを順守していない集団に比べ、全死因および原因別の死亡リスクが大幅に低いことが、中国・山東大学のMin Zhao氏らの調査で明らかとなったのです(BMJ誌2020年7月1日号)。
本研究の開始前に、身体活動ガイドラインの推奨を達成することと、全死因死亡や心血管疾患、がんとの関連を評価した研究は4件のみで、その結果は一致していなかった。また、身体活動ガイドラインと他の原因別の死亡(アルツハイマー病や糖尿病などによる死亡)との関連を検討した研究はそれまでなかったそうです。

推奨順守で4群に分け、全死因と原因別の死亡を評価

 研究グループは、米国の成人を代表するサンプルを用いて、米国人の身体活動ガイドラインの2018年版で推奨されている身体活動と、全死因死亡および原因別死亡の関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(責任著者は山東大学から研究支援を受けた)。

 国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey)の1997~2014年のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の2015年12月31日までのデータを関連付けた。成人(年齢18歳以上)47万9,856人が解析に含まれた。

 調査参加者の自己申告に基づき、1週間の余暇時間のうち有酸素運動および筋力強化運動に費やした時間を集計し、身体活動ガイドラインに従って、4つの群(運動不足、有酸素運動のみ、筋力強化運動のみ、有酸素運動+筋力強化運動)に分類した。

 主要アウトカムは、国民死亡記録から得た全死因死亡と原因別死亡とした。原因別死亡には、8つの疾患(心血管疾患、がん、慢性下気道疾患、事故/負傷、アルツハイマー病、糖尿病、インフルエンザ/肺炎、腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼ)が含まれた。

 

有酸素+筋力強化運動で、死亡リスク40%減

  • 7万6,384人(15.9%)が有酸素運動+筋力強化運動群
  • 11万3,851人(23.7%)が有酸素運動
  • 2万1,428人(4.5%)が筋力強化運動群
  • 26万8,193人(55.9%)は運動不足群

に分類された。


 ガイドライン2018年版の推奨を完全に満たした成人の割合は、男女とも年齢が上がるに従って低下した。ベースラインの背景因子のすべてで、4つの群に有意な差が認められた。ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群に比べ、これを満たした3群の参加者は、年齢が若く、男性や白人、未婚者、非喫煙者、少量~中等量の飲酒者が多く、学歴が高く、正常体重者が多く、慢性疾患を有する者が少なかった。

研究結果を簡単にまとめると、、、
  • 追跡期間中に、5万9,819人が死亡。このうち、1万3,509人が心血管疾患、1万4,375人ががん、3,188人が慢性下気道疾患、2,477人が事故/負傷、1,470人がアルツハイマー病、1,803人が糖尿病、1,135人がインフルエンザ/肺炎、1,129人が腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼで死亡した。
  • 全死因死亡のリスクは、ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群と比較して、筋力強化運動群が11%、有酸素運動群が29%低く、有酸素運動+筋力強化運動群では、さらに大きな生存に関する利益が認められ、リスクは40%減少していた。

 

以上の研究結果から、米国のガイドラインで推奨されている身体活動の水準を遵守すれば、慢性的な病気を予防し長生きできるという根拠が示されたのです。

では、一体どんな身体活動が、私たちの健康に有益性をもたらし生存上の利益を導いてくれるのでしょうか?

 

成人にとって理想的な運動量と運動強度

  • 週に150分~300分の適度な強度の有酸素運動を推奨。
  • 適度な強度の有酸素運動とは、活発な速足ウォーキング、社交ダンスなど。

ここで重要なのは、楽なウォーキングでなく速足ウォーキングが有酸素運動には効果的であるという内容。

また、息を荒くして行うような辛いランニングは推奨されていません。

健康上有益なランニングは、おしゃべりしながら楽しく走れる程度なら問題ないと思います。

  • 自重トレーニングや腕立て伏せなどを週に2日間以上の筋力活動も必要です。

自重トレーニングについては、下記のブログをご参照下さい。

 

 

media-naranja.hatenablog.com

 

 

media-naranja.hatenablog.com

 

 

長時間座っているのは要注意!!

一番見直して頂きたい生活習慣は、“長時間座らないこと”です。椅子に座っている時間が長い人ほど、高血圧のリスク、全死因死亡のリスクが高いと分かっています。
電車に乗ったら椅子に座るより立っていることを意識したり、自宅にいる間の座っている時間を少しでも短くすることを心掛けるのはどうでしょうか?

 

media-naranja.hatenablog.com

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あらゆる身体活動が多くの健康上の利益をもたらすことは、科学的に実証されているのです。適度な身体活動は、不安を低減させたり、高血圧を要望してくれます。また、睡眠の質を高め、インスリン感受性を改善するので糖尿病を予防する事も可能です。

 

  • 若者の場合、身体活動は認知力の上昇、骨粗しょう症の予防、新機能の改善に役立ちます。

  • 成人の場合では、ガン(膀胱、乳房、結腸、子宮内膜、食道、腎臓、胃、および肺)の予防に役立ちます。また、認知症アルツハイマー症を含む)、全死因死亡、心臓病、脳卒中、高血圧、2型糖尿病うつ病のリスクを軽減します。

  • 高齢者の場合、転倒や転倒による怪我のリスクを低下します。

  • 妊婦の場合、身体活動産後うつ病のリスクを減らします。

 

全ての年代で、適度な身体活動は体重増加のリスクを減らし、人々が健康的な体重を維持するのに役立っているのです。

健康面の利益を考えた場合、わざわざお金を投資してジムに通うわなくても、普段から早歩き、電車では座らず立っている、駅構内ではエレベーターより階段を使う、自宅で椅子に座っている時間を短くする、などの生活習慣における改善を心掛けるだけで、慢性的な病気のリスクを減らし、長期的に健康的な生活を全うすることが可能になるのです。

よっし!!!

私も座りながら、このブログ書くのをやめて、スタンティングデスクで立ちながら書いてみようかな!!

 
 

原著論文はこちら

Zhao M, et al. BMJ. 2020;370:m2031.

 

参考

ケアネット