現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

ナッツをとって“ナッツ姫”になりましょう! ~ナッツが長寿の近道だ!!~

 

ちょうど今から3年前、2014年12月5日に起きた「大韓空港ナッツリターン事件」を覚えているだろうか・・・。

“ナッツ姫”こと大韓航空の元副社長・趙顕娥(チョ・ヒョナ)がニューヨーク発・仁川行きの大韓航空機のファーストクラスに搭乗した際、皿に盛られて出されるはずのナッツを袋のまま提供されたとして激怒。動き始めていた同航空機をリターンさせて責任者を降ろし、仁川への到着を11分遅らせたという前代未聞の事件!!

 

いやいや、、、私はこの“ナッツ姫”にフォーカスしたいのでなくて、ナッツ(木の実)にフォーカスしたいのだった! 

話がそれました。反省・・・。

 

皆さん、ナッツ(ピーナッツ、アーモンド、クルミ等)は摂ってらっしゃいますか?

アーモンド、ピーナッツ、栗、クルミ、落花生などのナッツ類は、不飽和脂肪が豊富で、かつカリウムマグネシウム、カルシウムといったミネラル、それにビタミンも多く含まれる栄養価の高い食べ物であることが知られています。事実、ナッツには血管の内皮機能の改善やインスリン抵抗性を改善するという報告もあるんです。

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ナッツの摂取量が多いほど、死亡率が少ない

今回、ご紹介する研究はナースヘルス追跡研究という約7万6,000人の女性を対象とした追跡調査と、ヘルスプロフェッショナル研究という約4万2,000人の男性を対象とした追跡研究という2つの大規模な疫学研究をまとめたものです。米国・ハーバードT.H.Chan公衆衛生大学院のGang Liu氏らが、看護師健康調査(1980~2014年)と医療従事者追跡調査(1986~2014年)の参加者のうち、ベースライン時あるいは追跡期間中に2型糖尿病と診断された1万6,217例について行った試験で明らかにしたものです。

*1

 

この研究によって、

  • ナッツの摂取量が多いほど、心血管疾患や冠動脈疾患の発症率を低下させ、これらによる死亡要因を減少させるということが分かった。

  • 糖尿病と診断後、ナッツの摂取量を増加させる事によって心血管疾患発症リスク、冠動脈疾患発症リスクを低下させる事が出来た。

 

 

研究結果

延べ追跡期間は22万3,682~25万4,923人年。その間に3,336例が心血管疾患を発症し、5,682例が死亡した。

  • 総ナッツ摂取量の増加は、冠動脈疾患発生率および死亡率低下と関連した。
  • 週5サービング(1サービング=28g)以上のナッツ摂取量が多い参加者は、月に1サービング未満の少ない参加者と比較して、総心血管疾患の発生率(多変量調整後のハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[95%CI]:0.71~0.98、傾向のp=0.01)、冠動脈疾患の発生率(HR:0.80、95%CI:0.67~0.96、傾向のp=0.005)、心血管疾患の死亡率(HR:0.66、95%CI:0.52~0.84、傾向のp<0.001)、全死因死亡率(HR:0.69、95%CI:0.61~0.77、傾向のp<0.001)が低かった。
  • 総ナッツ摂取量は、脳卒中発症やがんによる死亡率と有意な関連はみられなかった。
  • 木の実(クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミア、ヘーゼルナッツなど)の摂取量が多いほど、総心血管疾患および冠動脈疾患の発生率、心血管疾患とがんによる死亡率、全死因死亡率が低下していた。一方、ピーナッツ摂取量の増加は、全死因死亡率の低下のみと関連していた(すべて、傾向のp<0.001)。
  • 糖尿病と診断後に総ナッツ摂取量を変えなかった参加者と比較して、診断後に摂取量を増やした参加者は、心血管疾患リスクが11%、冠動脈疾患リスクが15%低かった。また、心血管疾患死亡率は25%、全死因死亡率は27%低かった。
  • これらの関連は、性別/コホート、糖尿病診断時のBMI、喫煙状態、糖尿病罹患期間、糖尿病診断前のナッツ摂取量、または食事の質によって層別化されたサブグループ分析においても持続した。 

※ナッツを多く食べる人は、摂取量が少ない人にくらべて、ビタミン剤や果物、野菜の摂取が多く、かつ肥満が少なく、活動量も多いなどの交絡因子が数多くあるが、これらの因子で補正してもなお、死亡率は少ないという結果であった。

 

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ナッツの摂取によって、血糖値を有意に減少させる

2型糖尿病患者さんにおいて、ナッツを摂取することでHbA1cを低下させ、空腹時血糖値も減少させることが分かった。

なお、空腹時インスリン値はナッツ類で好影響でありました。

 

研究方法:2型糖尿病患者を対象とした12のランダム化試験のメタ解析を実施

●対象試験:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、コクランより抽出した12試験(n=450)(2014年4月6日時点まで)

●データ抽出条件:

・ナッツ類を基調とした食事(含有中央値:56g/日)と等カロリーのナッツなしの食事の比較・糖尿病患者を対象に行われた3週間以上のランダム化比較試験 

HbA1c空腹時血糖値、空腹時インスリン値、HOMA-IRの評価あり

 

研究結果:ナッツで血糖値が低下する


● ナッツ類を基調とした食事で下記指標の有意な低下が認められた。
HbA1c: 平均差  -0.07%(95% CI:-0.10、-0.03%)、p = 0.0003
空腹時血糖値: 平均差 -0.15 mmol/L(95%CI:-0.27、-0.02 mmol/L)、p = 0.03
※ナッツ食群 vs コントロール

●空腹時インスリン値、HOMA-IRはナッツ類での好影響が示されたが、有意差は認められなかった。

 

HbA1cとは・・・

通常、血糖値には食後血糖値、空腹時血糖値などがあり、採血する直前の食事内容・食事量によって血糖値は大きく変わります。一方、HbA1cは、赤血球に存在するヘモグロビン(Hb)に、ブドウ糖が結合したものです。赤血球の寿命は約4か月であり、この間に赤血球が体内をめぐり、ヘモグロビンにブドウ糖が結合します。血液中のブドウ糖が多いほどHbA1cの値は高くなり、HbA1c値は過去1~2か月の血糖コントロールの状態を反映しますので、採血前日や当日の食事の影響を受けず、1~2ヶ月間での平均的な血糖値を測定することが出来るのです。

 

www.ncvc.go.jp

 

 

ナッツ類の摂取で心血管疾患や死亡、血糖値を低下させる

ナッツの効用

  1. 心血管疾患、冠動脈疾患の発症率の低下
  2. 脳卒中を含む心血管疾患、冠動脈疾患が原因による死亡率の低下
  3. HbA1c空腹時血糖値を減少させる
  4. 糖尿病患者さんの血糖値を適切にコントロールできる

 

 

豊富なナッツを摂取して病気を予防しよう!

ナッツは、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミア、ヘーゼルナッツなどをバランスよく摂取したほうが多種の栄養素を摂取する事ができます。

 

1日の上限は70gが妥当か!?

今研究では、1日28~30gのナッツを摂取していますから、28g~30g/日を平均的にとっていれば、心血管疾患や冠動脈疾患を予防することが可能ではないかと考えられます。

一方で、ナッツは高カロリーですので(いくら良質の脂質といえど・・・)、摂りすぎは肥満の原因となるので注意が必要です。

ナッツ摂取と、血中の脂質の値の関連を調べた研究のレビューによると(Arch Intern Med. 2010;170(9):821-827)、1日70gのナッツ摂取が悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪の数値の低下と相関していました。これを加味すると、少なくとも1日70gの摂取までは許容されそうですね。

 

以前、ブログでご紹介したDASH食。このDASH食もナッツを摂取することを推奨しています。さらにDASH食も長寿に効果的であり、脳卒中を含む心血管疾患を予防するといわれています。

 

media-naranja.hatenablog.com

 

ナッツは高カロリーではありますが、飽和脂肪酸を多く含み身体の健康維持にはとても重要な働きをしてくれます。

 

皆さん、積極的にナッツを摂ってみはどうですか?

例えば、小腹がすいた時やおやつに食べる食品をチョコレートやお饅頭でなく、ナッツに変えてみるのも良いかと思いますよ。

 



 

*1:Circulation Research誌オンライン版2019年2月19日号

長寿遺伝子❝テロメア❞を守れ!! 老化やがんから身体を守るPART2~

若々しく健康な身体を手に入れるためのカギを握ると言われる、“テロメア”。

このテロメアを守るために、私たちに何が出来るのか・・・。

そして今、命の回数券といわれるテロメアを守り、さらにテロメアを伸ばす働きをするテロメラーゼを増やす研究が進んでいるのです。

 

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研究netより引用

 

テロメアを守るためのキーポイント

  1. 心理的ストレスの軽減
  2. 食生活の改善
  3. 十分な睡眠
  4. 禁煙
  5. 過度の飲酒を避ける

 

心理的ストレスの軽減

現代社会において、ストレスを皆無にする生活は難しいと考えられます。家庭、仕事、友達関係など、我々は日々さまざまなストレスにさらされているのです。では、このストレスとどの様に向き合っていけば良いのでしょうか?

 

ストレス軽減に瞑想(マインドフルネス)がオススメ!

カリフォルニア大学 ロサンゼルス校 ヘレン・ラブレツキー教授らの研究チーム行った実験です。
「呪文を唱えながら指先を動かし、頭の中に光がさし込むような光景を思い浮かべるヨガの瞑想(めいそう)」
これを40代以上の女性たちに、毎日12分、2か月間行ったところ、テロメラーゼは、平均で43%も増加しました。

ヨガ以外にも自宅で行う簡単な方法として、4秒間かけて息を吸い、4秒間かけてはき出す。この呼吸をしながら、花、ろうそく、夕日などを見つめます。1日10分から始めます。この方法でも瞑想(めいそう)の効果は期待できます。

 

 

瞑想(めいそう)と聞くと、「眉唾ものだな!」と感じられる方も少なくないと思いますが、実はこの瞑想は、科学の対象になっています。まだメカニズムは不明なのですが、めい想はストレス軽減など、健康に効果があるという報告が増えてきており、病院や一般企業などでも、めい想を取り入れるところが増えてきています。
今回おもしろいのは、その瞑想が細胞レベルでも効果があるということが分かってきたんじゃないかなということです。

 

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有酸素運動テロメアを守る!

運動は、筋トレよりもジョギングなど、軽めの有酸素運動を週3回程度続ける方が有効だそうです。

 

地中海式食事法の遵守が効果的

以前、このブログでもご紹介した『地中海式食』。この食事を遵守している人ほど、テロメアが長かったそうです。通常の食事と比較して、果物、野菜、卵、乳製品・ミルクを2倍摂取します。さらに魚介類はほぼ同等であり、肉は半分から三分の一、穀物と精製した糖類はそれぞれ70~80%に減量します。

 

media-naranja.hatenablog.com

 *1

 

十分なの睡眠がテロメアを短縮させない!

7時間以上の睡眠がテロメア短縮化させないためには必要だと言われています。皆さん、ぜひ十分な睡眠をとるように心掛けてください。


愛情が大切

友人やパートナーとの良好な関係を保つことも大切です。友人やパートナーと対話を重ね、家族や地域の人間関係の大切さを再認識する。このように愛情に満ちた生活を送ることもテロメアを守るためには欠かせないそうです。

「愛情は大切です。孤独で気分が沈んでいる人はテロメアが短く、3倍以上も病気になりやすくて、早死にする傾向にあります。」

 と、提唱している科学者もいるほどです。

 

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瞑想+有酸素運動+野菜中心の食事+愛情の4つの要素を組み合わせると、テロメアが伸びるという研究結果が明らかに!

日常の生活習慣を変えることで、より大きな効果を上げられないか、試行錯誤を重ねてきた研究者がいます。ディーン・オーニッシュ博士です。


がん患者のグループにあるプログラムを実践してもらったところ、テロメアが実際に伸びたのです。
そのプログラムとは、めい想を含む4つの要素から構成されていました。

  1. 有酸素運動
    1日30分のウォーキングを週に6日間行なう。

  2. 野菜中心の食事
    オメガ3脂肪酸が豊富な野菜や豆類などの食材を中心とした

  3. 週に1度のカウンセリング(会話を用いた相談)
    被検者と対話を交え、家族や地域の人間関係の大切さを再認識してもらいます。

 

この生活習慣プログラムを5年にわたって継続したところ、参加者のテロメアは平均で10%も伸び、がんの進行も遅らせることができたそうです。

 

 

過剰にあっても問題となる、テロメラーゼ

 最近、テロメラーゼを増やすサプリメントが市販されています。このサプリメントエビデンスは存在してません。

テロメラーゼは心血管疾患や認知症などの病気のリスクは低下させますが、一方、テロメラーゼが過剰になると特定のがん(低悪性度漿液性卵巣がん肺腺がん神経芽細胞腫、膀胱がんなどの発症リスクを高めてしまうのです。

*2

 

 

画期的な発見である “テロメア” だが、シンプルな習慣こそが、テロメアを守る要因

 画期的な発見でしたが、ストレス軽減、野菜中心の食事、睡眠、運動、などシンプルな習慣の変化が、これほど大きな効果をあげるなんて、本当に驚きです。“細胞レベルで若返る時代”の始まりなんだと実感します。

そして、テロメアを守るために大切な習慣は『愛する』ということ。実は、21世紀のある報告によると、「孤独はタバコと同じくらい健康に悪い」いうのです。

 もう一つ皆さんにお伝えしたいのは、テロメアの長さでだけで、寿命が完全に決まるわけではないということです。今後、大規模調査が進んでいくと、例えば「テロメアが短いんだけれども、長生きの人」ていう事も判明してくると思います。
つまり、健康を決める要因というのは、100も200もあるわけでして、テロメアというのは、その指標のひとつでしかない、という事に注意して頂きたいと思います。

 世間は、テロメアが長寿の遺伝子と分かったら、「テロメラーゼを外から増やせばいい!!」と短絡的に考えがちです。しかし、テロメラーゼをマウスの背中に移植したところ、皮膚は若返りましたが、それと同時に“がん”がたくさん発生しました。

このように、テロメラーゼを増やすように、人工的に手を加えるという作業は「もろ刃の剣」なのでしょうね…。

 

まずは、普段の食生活を改善し、そして家族やパートナーとともに過ごし愛する・・・このようなシンプルな方法が長寿の秘訣なのかもしれませんね。



長寿遺伝子❝テロメア❞を守れ!! ~老化やがんから身体を守る方法①~

「いつまでも、若々しく健康でありたい・・・」そんな、果てない願い持った事、ありませんか?

今回は、そんな願いを叶える研究である、長寿遺伝子『テロメア』についてお話していきたいと思っています。

 

命の回数券テロメア

テロメア”とは、身体を作る染色体の末端に付いている保護キャップで、染色体の末端が「擦り切れない」ようにする作用がります。靴ひもの両端についているプラスチック製の覆い(アグレット)に例えられています。テロメアは、細胞分裂が起こるたびに短くなり、なくなってしまうと細胞分裂が停止して細胞は死滅します。つまり、これが細胞の老化です。

ところがテロメアを伸ばして細胞から若返る方法があり、がんや動脈硬化を防げる可能性もあるという論文が散見されています。それは日常で実践できる生活習慣(食事、運動、睡眠など)によってテロメアを伸ばせるという研究です。

しかしこのテロメア長は、組織により短縮速度が異なること、テロメア長に個人差が大きいことをが知られています。

 

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NIKKEI STYLEより引用

 

テロメアが短いと、“がんになり易い”

40代以降に発症するがんはテロメアが関連していると言われています。テロメアが短くなってくると、染色体がど不安定になり、遺伝子の変異が起きやすいという状態に陥ります。これは、“がんになり易い”と言い変えることが出来るのです。

食道がん、口腔がん、膵臓がん、皮膚がん、肝硬変、肝がん、などが挙げられます。

 

テロメアと脳の老化の関連生

テロメアの短縮が脳の老化と関連していると言われており、テロメアが減って短くなった人ほど、脳が萎縮していたのです。特に、記憶をつかさどる海馬の萎縮が顕著であったというのです。このテロメアの短縮は認知症とも関連しているといわれているのです。

 

テロメアが短いと心疾患リスクも高まる

テロメアの短縮は心血管疾患のリスクにも関連していると考えれら、テロメアが短いと、動脈硬化を招き、冠動脈疾患を発症するリスクが高いと言われています。狭心症心筋梗塞などが挙げられます。

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テロメアと“見た目年齢”の関係

テロメアが短いと、“見た目年齢”が高く、老けて見られるという事も示唆されており、さらに、この“見た目年齢”は寿命にも関連していて、見た目が若いほど長寿である可能性が高いというのです。

同じ遺伝子である、双子(ふたご)間の見た目年齢が実年齢とかけ離れているほど、双子のうち、より年老いて見えるほうが先に死亡する可能性が大きいようだったという研究結果もあります。
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テロメアを短くさせている原因は何か

  • 強いストレスや心配性傾向の強い人
  • 飲酒
  • 喫煙
  • 糖尿病

などが挙げられますが、テロメアの短小化と最も関係しているのは、精神的ストレスにとの関連性です。

家族との死別、離婚、金銭問題などの大きなショックやストレスによって、テロメアは短くなると言われています。また、飲酒や喫煙は口腔内や喉、気管支、食道などの細胞にストレスを掛けていると考えらているのです。

 

テロメアを伸長させるには!?

テロメアを伸ばす働きのある『テロメラーゼ』

生物はテロメアを再生する働きも備えており、『“テロメラーゼ”という酵素が作用することで、テロメアDNAが作り出され伸長する』と言われています。皮膚や血管、血液など細胞組織によって条件は異なるりますが、細胞分裂による「引き算」とテロメラーゼの働きによる「足し算」でテロメアの長さが決まるのです。

 

テロメアを短縮させないようにする

これは、テロメアを短小化する原因を除去すれば良いわけですが・・・。ストレスをためない生活なんて、この現代社会では無理難題ですよね!

また、どういった食生活にしたらテロメアが短縮しないのか?非常に気になる点です。

 

次回のブログでは、このテロメアーゼを効率的に作り出す方法と、テロメアを短小化させないようにする、食生活やストレス軽減について、お話しようと思っております。

それでは皆さまが、「若々しく健康的な生活を送れるように・・・」

そのお手伝いが出来れるように、今後もブログでお伝えしていきますね(^^)

 

style.nikkei.com

 

 



放っておくと危険な痛風!! ~風が吹いても痛いなら、病院に行きましょう~

皆さん、“痛風”という病気をご存知ですか?

この病気は、その名の通り、「風が吹いただけで、痛い!!」病気なんです。

 

痛風とは

血液中の尿酸値が上昇(高尿酸血症)し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。この結晶を白血球が処理する際、痛風発作(急性関節炎)が発症します。高尿酸血症状態が続くと尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全となります。

高尿酸血症の原因は様々です。腎臓から尿酸を排出する機能が低下したり、暴飲・暴食、肥満、激しい運動などが原因になると考えられています。降圧利尿剤などの薬物も原因になることがあります。

痛風になると、足の親ゆびのつけ根、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作が起こることがあります。耳介に痛風結節や尿路結石が出来ることもあります。

生活習慣病(肥満や高血圧など)を合併することも少なくありません。痛風発作を何度か経験している人は、発作の前兆(違和感)を感じることがあります。

 

www.tufu.or.jp

 

 

痛風を予防するには、まず食生活の改善!

アルコール(とくにビール)、肉類(とくに赤肉、ジビエ、内臓)、魚介類(貝、大型海水魚)、フルーツジュース、高濃度果糖液の入った飲料などの摂取は痛風のリスクを高めるそうです。(表1参照)

 

一番右枠にある、“相対危険度”。この数値が高いほど、痛風を発症しやすいと考えられます。

食生活習慣の改善としては、「体重減少」が痛風のリスクを減少させると言われています。また、果糖液(ジュース)、プリン体を多く含む動物性蛋白、とくにビールを含むアルコールを避けるべきであるとされています。

一方で、プリン体を多く含む野菜は痛風のリスクを上昇させないといわれていて、野菜や低(無)脂肪の乳製品の摂取が推奨されています。

 

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病院で行う痛風の治療方法 

痛風は関節の激痛を伴う事があります。このように激痛が続いている状況では患者さんの生活の質が低下してしまいます。歩くのが億劫になり、外出や仕事にも影響を与えてしまします。

ですので、まずこの関節の痛みをとることから治療はスタートします。

  1. 第1選択は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)です。歴史的にはインドメタシンが好んで使用されていたのですが、他のNSAIDsに比べて効果があるという科学的根拠はありません。
  2. ステロイド抗炎症薬が使用できない場合、あるいは非ステロイド抗炎症薬では効果を発揮できなかった場合、副腎皮質ステロイドホルモンを使用します。
    副腎皮質ステロイドホルモンは短期間で終了すると再燃がありうるため、10~14日で漸減していきます。
  3. 痛風発作の前兆期にはコルヒチンを用います。やや高価であり、鎮痛効果はなく、発症後72~96時間経過していると効果に乏しいとされます。
  4. 再発予防の治療については、痛風の既往があり、かつ年2回以上の発作(腎機能低下患者では年1回以上)、痛風結節、または尿酸結石の既往がある場合には尿酸を下げる治療を考慮します。症状がなくても発作後3~6ヵ月は治療を継続し、症状がみられる場合には引き続き継続します。
  5. 日本での目標値としては尿酸値6mg/dL以下に維持するのが望ましいとされています。

 痛風は、腎臓病や糖尿病、がん、睡眠時無呼吸症のリスクを上昇させる可能性があるとの報告もされているんですよ!

 

痛風の患者さんが冠動脈疾患を発症すると、心血管疾患の予後が不良になる可能性があるという研究報告

 

心臓専門医であるPagidipati氏らは今回、1998~2013年に同大学医療センターで閉塞性冠動脈疾患により心臓カテーテル治療を受けた患者1万7,201人のデータを分析した。対象患者のうち1,406人(8.2%)は研究開始時に痛風に罹患しており、心血管リスク因子に対する治療を受けていた。
6.4年間(中央値)の追跡の結果、冠動脈疾患患者は心血管リスク因子への積極的な薬物治療を受けていても、痛風があると心血管疾患の転帰が不良となり、死亡とも関連することが分かった。また、研究開始時に既に痛風に罹患していたか、追跡期間中に痛風を発症した患者は、痛風のない患者に比べて心血管疾患による死亡や心筋梗塞または脳卒中のリスクが15%高いことが明らかになった。さらに、痛風のある患者では、そうでない患者に比べて心不全により死亡するリスクが2倍に上っていたという。 

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結果をまとめると、以下の通りです。

  • 冠動脈疾患患者さんは、積極的な治療を受けていても痛風があると心血管疾患の予後が不良となり、死亡とも関連する。
  • 通風を発症すると、心血管疾患による死亡や心筋梗塞脳卒中のリスクが上昇する。
  • 痛風のある患者さんは、心不全により死亡するリスクが高い。

という事なのです。

 

痛風が心血管疾患患者さんの死亡リスクを高める!

痛風のある冠動脈疾患患者さんは、たとえ標準的な治療を受けていても心血管疾患を発症するリスクが高いことを医療従事者は知っておくべきですし、患者さん自身もそうしたリスクが存在することを認識しておくのが大切だと思います。

痛風が心血管疾患リスクを高める理由は明らかにされていませんが、酸化ストレスや炎症の亢進の関与が考えられます。一般に、『炎症レベルが高いと心血管疾患リスクも上昇する』ことが知られており、痛風は急性の炎症性疾患と特徴づけられると考えられるからです。

 

痛風は全身病である!

痛風は単に関節の疾患ではなく、身体全体に炎症を引き起こし、心臓などさまざまな臓器にも影響を及ぼす」と研究者らは警告しています。また、痛風の症状が頻繁に出ないからといって、軽視することは非常に危険です。症状が出るのが2年一回程度なので治療の必要はないという患者さんもいらっしゃいますが、痛風を治療しないで放置すれば心血管の状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

『風が吹いただけで痛い病気、痛風』。症状が出ないからと言って放置しているのは、他の病気(冠動脈疾患、脳卒中、がん、糖尿病、腎疾患)を発症するリスクもあります。さらに、これらの疾患の予後を不良にさせる可能性があるのでとても危険な病気なのです。痛風治療は途中でリタイアせず、医師の指示のもと服薬を行いながら、食生活の改善を行うのがベストであると考えます。


*1:[2018年8月17日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.

血圧が高いと脳卒中、冠動脈疾患で死亡するリスクが高まる!

“突然死”と聞くと、恐ろしいですよね?

この、“突然死”は全死亡の10%と言われています。しかも、「突然死”のうち、30%~40%は冠動脈疾患が原因である」という事実を知ったら、皆さんどう思われすか?

諸外国と比較して、日本は依然として低い冠動脈疾患発症率ではありますが、肥満や不活発な生活習慣の蔓延による耐糖能異常、脂質異常の割合の増加により、男性、特に都市部男性における冠動脈疾患や脳卒中などの発症率の増加が示唆されているのです。

 

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今回は、血圧の数値によって、脳卒中および冠動脈疾患に罹患して死亡するリスク“生涯リスク”を層別化してみました。

生涯リスク(lifetime risk:LTR)とは、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示します。

アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease:CHD)死亡の生涯リスクを算出した研究は存在していませんでした。

今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡および冠動脈疾患死亡の生涯リスクが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告されました。

本研究で算出された生涯リスクは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう考えられれます。*1

 

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生涯リスクとは・・・
人の一生を通じて特定の因子に基づく健康障害等が発生する潜在的可能性をいう。通常は、がん、心不全脳卒中のように近い将来に発生する確率は高くないが、発生した場合に影響が重大な、または生命に危険をもたらすような疾病を対象とする。こうした疾病を引き起こす因子は生活習慣、居住環境、労働環境などさまざまである。喫煙や高線量の放射線被ばくなど、各種の因子について生涯リスクの大きさが定量化されつつあるが、複合的な要因で発生する疾病もあり、まだその影響が十分に解明されていない因子も多い。例えば、放射線被ばくは低線量であっても発がんに関する有意な生涯リスクを持っている(確率論的には閾値は存在しない)ため、集団被ばく線量の大きさを管理する必要があるとの考えに基づき安全規制が行われているが、低線量の放射線被ばくに起因する発がんリスクについてはまだ明確には分かっていない。
 
 
 
コホート研究のメタ解析結果
  • メタ解析には、13コホート、10万7,737人の日本人(男性42.4%、平均年齢55.1歳)が含まれた。
  • 平均追跡期間15.2±5.3年(155万9,136人年)の間に、脳卒中で1,922人が死亡し、冠動脈疾患で913人が死亡した。
  • アウトカム以外の死亡を競合リスクとして調整後、35歳時点の脳卒中死亡およびCHD死亡の10年リスクは、それぞれ1.9%以下および0.3%以下であった。
  • 35歳時点の脳卒中死亡生涯リスク(男性/女性)は、至適血圧群で6.1%/4.8%、正常血圧群で5.7%/6.3%、正常高値血圧群で6.6%/6.0%、I度高血圧群で9.1%/7.9、II度高血圧群で14.5%/10.3%、III度高血圧群で14.6%/14.3%であった。
  • 冠動脈疾患死亡生涯リスクも、血圧の上昇とともに高値を示したが、脳卒中死亡生涯リスクよりも低かった(7.2%以下)。
  • 脳卒中または冠動脈疾患による死亡の生涯リスクは、基準年齢が若年ほど高値を示した。

 

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血圧が高いほど、冠動脈疾患や脳卒中が発症して死亡するリスクが高まる!!

  1. 至適血圧(収縮期血圧120未満かつ拡張期血圧80未満)において、死亡リスクが一番低くなり、血圧区分の上昇とともに死亡リスクは増加している。

  2. 血圧上昇による冠動脈疾患死亡リスクの上昇は、若い年齢層において顕著に認められた。

  3. 高血圧の危険因子があるほど、冠動脈疾患発症しやすいことが分かった。

 

 これは、冠動脈疾患や脳卒中を予防するには、30代からの血圧の管理がとても重要であるといことを示してくれた研究であると考えられます。

 

 高血圧の診断は診察室や健診会場などで測定された血圧値に基づいて行われることが多いですが、診察室以外で測定した血圧が常に正常域である状態を白衣高血圧という。逆に、診察室での血圧が正常域でも、早朝や勤務中、夜間あるいは就寝中など診察室以外の血圧が高い状態を仮面高血圧(隠れ高血圧)といいます。

 研究によると、心血管疾患による死亡リスクの上昇は、仮面高血圧で認められたが、白衣高血圧では認められなかったそうです。白衣高血圧、仮面高血圧の診断だけでなく、診察室血圧の受診間変動や家庭血圧の変動も心筋梗塞を含む循環器疾患のリスクを高める可能性があるため、診察室血圧だけでなく家庭血圧を測定する事が重要です。

 診察室以外にも、起床時、仕事中、就寝前等において、血圧を記録し、その変動を確認してみるのも大切ですね!

 

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心血管発症のリスクには、糖尿病(ヘモグロビンA1c、血糖値)や脂質代謝異常(コレステロール値)などもありますが、これらは病院等で検査する必要性があるため、ご自身での管理は難しいと考えられます。一方、血圧の測定はご自宅で簡単に行う事ができます。非常に管理が簡便で生活習慣改善へのステップアップのひとつでることは、間違いないです。ご自身の健康管理の目的で、血圧測定を習慣にしてみては如何でしょうか??

 

 

*1:Hypertension誌2019年1月号

加熱式タバコの健康被害について、今ある科学的情報で考えてみた!!

喫煙によるニコチン依存症は、“病気である”という事が認識されるようになり、

2006年から、一定の健康保険を使っての禁煙治療を受けることが可能となりました。

しかし、禁煙外来で用いられる、『ニコチン代替療法(ニコチンを含まない飲み薬、ニコチンパッチ、ニコチンガムの3種類)』は、気分不快、嘔気などの副作用があり、治療を完遂できず、途中で離脱してしまう患者さんも少なくありません。

 

一方、IQOS(アイコス)やPloomTECH(プルーム・テック)などに代表される、加熱式タバコのシェアが日本で急速に拡大しています。禁煙をめざして、あるいは周囲への影響を考慮して従来のタバコから電子タバコへの移行する人が多くなっています。

 

実際、電子タバコの広告では「紙巻タバコの煙と比較して、有害性成分の量を90%低減」と大きく謳われているますが、本当に健康被害はないのでしょうか?

科学的根拠を元に考えていきたいと思います。

 

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ニコチン代替療法

 ニコチン代替療法には、パッチ、ガム、スプレーなどのほか、わが国ではバレニクリン製剤(商品名:チャンピックス、ニコチネル)という錠剤も使用されている。

 しかし、前にも述べたように、バレニクリン製剤(チャンピックス)には多くの副作用の報告があります。代表的なものが、悪夢・幻覚・幻聴・意識消失・意欲低下・不眠・うつ症状・嘔気・皮膚掻痒感などで、これらの強い副作用により、治療が完遂できず途中で離脱してしまう患者さんもいらっしゃるのが現状です。

 

電子タバコの特徴

 現在普通のタバコは、煙を吸うのに対して、電子タバコは水蒸気を吸い込むという点が大きな違いである。したがって普通のタバコは、タバコの葉を燃やすことで生じる臭いや有害物質を発生する。
 一方電子タバコはタバコの葉を使用せずに、e-リキッドといわれる液体を電力で熱することで生じる水蒸気を吸い込み、その臭いを自分の好みに合わせて楽しむことができるのが売りである。
 電子タバコといってもすべてが完全にニコチン・フリーではなく、少量のニコチンを

含有しているものもあり、本研究で用いられた電子タバコには18mg/mLのニコチンが含まれている。

 

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加熱式たばこ製品の「iQOS(アイコス)」は血管に悪影響を与える

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究によると、iQOSの蒸気に曝露したラットの血管内皮機能は、一般的な紙巻きたばこの煙に曝露したラットと同程度に低下していたという。*1

 

UCSF医学部循環器内科学教授のMatthew Springer氏らはラットに(1)iQOSを加熱した蒸気(2)紙巻きたばこ(マールボロ)の煙(3)清浄な空気―のいずれかを曝露させた上で、血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation;FMD)検査により血管内皮機能を評価した。曝露は1回15秒間とし、5分間に10回行った。

 その結果、血管内皮機能はiQOS群で58%、マールボロ群では57%低下した。また、曝露を1回5秒間として5分間に10回行ってもiQOS群で60%、マールボロ群では62%の低下が認められ、iQOSの蒸気への曝露はマールボロに曝露した場合と同程度の血管内皮機能の低下をもたらすことが示された。 

  

 血管内皮機能の低下は動脈硬化をもたらし、心筋梗塞脳卒中などのリスクを高めると言われています。「加熱式たばこの使用者は従来のタバコの喫煙者と同様に、心血管の健康障害に直面する可能性があると、考えられます。

 また、研究グループは「加熱式たばこは煙は出さないが、血管の状態を悪化させるさまざまな化学物質を含んだ蒸気を発生させる」と説明。

 

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電子タバコの「有害性成分9割減」≠病気になるリスク9割減

 加熱式タバコ使用が広がった背景には、「従来の紙巻タバコに比べて有害性が少ない」という認識が大きく影響していると考えられる。実際、広告では「紙巻タバコの煙と比較して、有害性成分の量を90%低減」と誇大広告とも思われる、巧みなキャッチフレーズを見かける。

しかし、有害性成分が90%カットされたからと言って、病気になるリスクも90%低減されたわけではありません。有害性物質の量が1/10になったからといって病気になるリスクも1/10になるわけではない」と指摘した。



最後に、日本呼吸医学会からの声明をご紹介したいと思います。

  1. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響をもたらす可能性がある。
  2. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは、周囲に拡散するため、受動喫煙による健康被害が生じる可能性がある。
  3. 従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。

 

 

 加熱式タバコによる、身体への影響を少しでも分って頂けたのではないでしょうか?従来の燃焼式タバコから、加熱式タバコに移行しても、動脈硬化やそれに引き続き健康被害から逃れることが出来た訳ではありません。 

 加熱式タバコに切り替えることで、タバコ関連疾患のリスクを減らすことができるとは言えないというのが、専門家の見解です。

 

 しかし、我々医療従事者は、「新型タバコに変えました!」という患者さんに対して、まずはその意向や背景にある事情を尊重しています。頭ごなしに“加熱式タバコはダメ”とは言いません。まずは従来の燃焼式タバコをやめられた事は、患者さんにとっては前向きなステップの一歩です。なので、”良かったですね!”と言って、患者さんとともに、次のステップに進む手助けをしていきたいと考えています。

少しでも、「タバコをやめてみようかな~?」と、何となくでも良いので感じられた方は、ぜひ”禁煙外来”の足を運んで頂けると嬉しいです。

 

 

原著論文はこちら

Primack BA, et al. Am J Med. 2017 Dec 10. [Epub ahead of print]

 

参考

電子タバコvs.ニコチン代替療法、1年後の禁煙率/NEJM(2019/02/07掲載)

フィリップ モリス インターナショナル社の研究
米国国立がん研究所(NCI)による電子たばこの研究

全米たばこ調査による分析結果
PMI CEO Andre Calantzopoulos氏インタビュー(Nikkei Asian Preview)
非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解
日本呼吸器学会の見解中に引用されているWHOの報告書
東京都子どもを受動喫煙から守る条例

 

 

 

 

 

*1:米国心臓協会年次集会(AHA 2017、11月11~15日、米アナハイム

便秘は万病のもとの理由 ~便秘は心疾患発症リスクを上昇させる!?~

 便秘は若年層から高齢者の方まで、多くの方が一度は経験した症状かもしれません。

この便秘に関してですが、日本消化器病学会関連研究会において『慢性便秘症診療ガイドライン』が発刊されており、『便秘症』に関しては医療界でも注目が集まっている話題のひとつなのです。

 実はこの便秘症、アテローム動脈硬化症の発症と関連している(腸内微生物叢の変化による可能性)という事が、科学的根拠を基にしたデータから明らかになりました。

 

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 便秘が全死亡・心血管疾患の発症リスクと関連!!

今回、米国退役軍人コホートにおける研究から、便秘である事と、便秘薬の使用が、それぞれ独立して、全死因死亡、冠動脈疾患発症、虚血性脳卒中発症のリスクと関連していたことを、米国テネシー大学/虎の門病院の住田 圭一氏らが報告より分かりました。

*1

 

研究背景・研究内容

2004年10月1日~2006年9月30日(ベースライン期間)に、推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上(つまり、腎臓が悪くない人)であった米国退役軍人335万9,653例において、2013年まで追跡し、便秘の有無(診断コードと便秘薬の使用により定義)・便秘薬の使用(なし、1種類、2種類以上)と、全死因死亡率・冠動脈疾患(CHD)発症・虚血性脳卒中発症との関連を検討した。

研究結果

335万9,653例のうち、23万7,855例(7.1%)が便秘と同定。
人口統計、一般的な併存症、薬物治療、社会経済的地位に関する多変量調整後、便秘の患者は、便秘ではない患者と比べて全死因死亡率が12%高く(ハザード比[HR]:1.12、95%CI:1.11~1.13)、冠動脈疾患発症率が11%(HR:1.11、95%CI:1.08~1.14)、虚血性脳卒中発症率が19%高かった(HR:1.19、95%CI:1.15~1.22)。
便秘薬使用なしの患者に比べ、1種類および2種類以上の便秘薬使用患者のHR(95%CI)はそれぞれ、全死因死亡率で1.15(1.13~1.16)および1.14(1.12~1.15)、冠動脈疾患発症率で1.11(1.07~1.15)および1.10(1.05~1.15)、虚血性脳卒中発症率で1.19(1.14~1.23)および1.21(1.16~1.26)であった。

*2

 

また、大阪大学の久保田 康彦氏らの研究チームは、2015年に日本人を対象とした大規模コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort)Studyを用いて検討した結果、便秘症と心血管リスクの関連性を示唆する報告をしています

*3

 

研究背景・内容


本研究では、1988~1990年に心血管疾患やがんお既往のない7万2,014人(40~79歳、男性2万9,668人、女性4万2,346人)について、排便頻度(毎日・2~3日に1回・4日以上に1回)と下剤使用(はい・いいえ)に関する情報を含むライフスタイルのアンケートを開始時に実施し、2009年まで追跡。

研究結果


116万5,569人年のフォローアップの間に死亡した参加者は、冠動脈疾患が977人(男性561人、女性416人)、脳卒中全体が2,024人(男性1,028人、女性996人)、虚血性脳卒中が1,127人(男性606人、女性521人)、出血性脳卒中が828人(男性388人、女性440人)であった。

 

CVDの危険因子(糖尿病、ストレス、うつ病、運動不足など)の保有率は、下剤使用者と排便頻度の低い人で高かった。
多変量解析による下剤使用者のハザード比(95%CI)は以下のとおり。
 冠動脈疾患:1.56(1.21~2.03)
 脳卒中全体:1.27(1.08~1.49)
 男性における虚血性脳卒中:1.37(1.07~1.76)
 女性における虚血性脳卒中:1.45(1.17~1.79)
・追跡期間初期の死亡を除外しても同様の結果が認められた。
・排便頻度とCVDによる死亡の間に有意な関連は認められなかった。

 

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 便秘は立派な病気です!

便秘自身、排便回数の低下や、それに伴うQOL低下を自覚するものの、便秘が医師の治療や処方を必要な疾患であると認識している人はどれほどいるのだろうか? 

その証拠に、便秘症に関するセルフメディケア商品の市場規模が300億円超とも言われています。

まず、本人が便秘症であるという事を自覚し、「医師と患者の双方が、まずは便秘を『病気』として認識するとともに、適切な初療により慢性化させないことが重要であると思います。

 

 

便秘の定義(本邦ガイドライン) 

排便習慣(排便回数、残便感、膨満感など)には個人差が大きく、患者が「便秘」という言葉で意味する内容も様々です。

本邦にある便秘症に関するガイドラインでは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状況」を便秘と定義。

また、便秘症については、「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする場合であり、その症状として排便回数減少によるもの(腹痛、腹部膨満感など)、硬便によるもの(排便困難、過度の怒責など)と便排出障害によるもの(軟便でも排便困難、過度の怒責、残便感とそのための頻回便など)がある」としている。

 

便秘症でないものは以下のものです。
 ・何らかの理由で経口摂取量が不十分なことによる、排便回数の減少

 ・過度な残便感による訴え、排便に対する脅迫観念が由来のもの

 

便秘を放っておくと、狭心症脳卒中動脈硬化になってしまうかも。

便秘であること自体が、心血管リスク(冠動脈疾患、脳卒中の発症)を上昇させるという事実、本当に意外な事実だと感じます。便秘と心血管疾患には、腸内フローラ(腸内細菌)が関係しているのではないか!?との意見もあるようですが、今のところ、科学的な根拠のある見解ではありません。

 

便秘で心血管疾患になるなんて・・・そ「便秘になんてなりたくない!!」

と、誰しも考えるはず。

 

具体的に同のようにしたら便秘を防ぐことが出来るのか!?

次回は、医学的観点から便秘症の対策について考えていきたいと思います。

 

 

原著論文はこちら

Sumida K, et al. Atherosclerosis.2018 Dec 23;281;114-120. [Epub ahead of print]

 

 

 

*1:Atherosclerosis誌オンライン版2018年12月23日号に掲載。

*2:Journal of epidemiology誌オンライン版2015年12月26日号に掲載

*3:JACC(Japan Collaborative Cohort)Study