肥満が血管にダメージを与える!! ~糖尿病、心筋梗塞、脳卒中の引き金になる!?~
肥満の定義
肥満とは、「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」と定義されます。脂肪組織の蓄積する部位によって、皮下に脂肪のたまりやすい皮下脂肪型肥満と、小腸などの内臓の周囲に脂肪のたまりやすい内臓脂肪型肥満とに分類されます。外見上から、皮下脂肪型肥満は「洋なし型肥満」、内臓脂肪型肥満は「りんご型肥満」ともいわれます。近年、内臓に蓄積する脂肪から、種々の生理活性物質(遊離脂肪酸やTNF-α(ティーエヌエフアルファ)といわれる物質など))が分泌され、炎症を起こすことが明らかとなり、肥満は「程度の弱い、長く続く炎症」として捉えられるようになっています。
現在では、科学的な評価に基づく方法として、身長あたりの体格指数(body mass index:BMI)(計算式:BMI=体重(kg)/身長 (m)2)を計算して肥満を判定します。日本肥満学会の基準ではBMI 25以上を肥満と判定しています。BMIと疾病の関連をみると、多数の集団を対象とした分析結果では最も疾病の少ないBMIは約22であり、この値を用いて身長あたりの標準体重を計算します(標準体重 (kg) = 身長 (m)2×22 (kg/m2))。
肥満が動脈壁に直接ダメージを与える!?
この研究結果はまだ初期段階のものですが、「心疾患の治療や予防戦略でWNT5Aは新たな標的になり得る」とし、「脂肪細胞におけるWNT5Aの産生を抑制したり、WNT5Aが血管壁に与える有害な影響を阻害したりする治療法を開発できれば、肥満を抑え、心筋梗塞や脳卒中を予防できるかもしれない」と語られています。
これまで数多くの研究で、肥満の人は、やせた人と比べて心疾患リスクが高いことが明らかにされてきました。
- 肥満は2型糖尿病のリスクを高める
- 肥満は高血圧のリスクを高める
- 肥満は睡眠時無呼吸のリスクを高める
このように肥満は心疾患の原因となる、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症のリスクを高めるため、間接的に心疾患リスクを上昇させると考えられてきました。
一方、今回の研究では、肥満が血管に直接ダメージを与えている仕組みの一端を明らかにしたものです。
つまり、「肥満は間接的でなく、直接心疾患の原因となりえる可能性がある」という事なのですよね。
今回の研究で分かったことは、
- 心臓手術を受けた1,004人の心疾患患者から採取した血液と組織サンプルを分析した結果、肥満患者では血中のWNT5Aレベルが著しく高いことが分かった。
- WNT5Aは特に動脈周囲にある脂肪組織から大量に放出されていることを突き止めた。
- WNT5Aレベルが高い患者では、その後3~5年の間に、動脈内にプラークがより速く蓄積することも明らかになった。
この研究結果からは、WNT5A自体が心疾患の原因であると断定はできないが、実験室でより直接的な実験にて、血管細胞をWNT5Aに曝露させたところ、「より有毒な物質が産生され、プラークの蓄積を促進する状態に変化した」のだという。
CT検査(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)を用いて、腹部脂肪がどこについているのか(皮下脂肪なのか、内臓脂肪なのか?)、脂肪の量や範囲が測定できます。さらに、心臓を囲んでいる脂肪量を測定したり、心臓の血管の動脈硬化の程度を計測できる診断装置がございます。
CT撮影時間は5分!苦痛なく検査することが出来ます。ただ、身体が閉所に入りますので、閉所恐怖症気味のかたはお申し出くださいます。
肥満の程度、心臓の病気や全身の動脈硬化の具合が知りたい方は、下記サイトまでアクセスして下さい(^^)
読者の皆さんが、健康的で楽しく、明るく、生きがいを持った生活をおくられる事を心から願っております。
*1:「Science Translational Medicine」9月18日号
今年のインフルエンザ予報発表!!~ゾフルーザとの付き合い方も含めて~
寒さも本格的になってきました!皆さん、お風邪など召されていませんか??
この時期、世間を賑わし始めるのが『インフルエンザ』。
当院でも、インフルエンザのワクチン接種にいらっしゃる患者さんが増えてきました。そこで、今季のインフルエンザの特徴や対策方法について、皆さんにお知らせしようと思います。
インフルエンザは、例年12月から3月にかけて流行していますが、東京都が9月26日付でまとめた報告書では、"今季は昨年と比べても11週早い流行目安を迎えている”と言っています。異例ともいえる速さでの流行開始に、都は早めの注意と対策を呼び掛けています。
“今年はインフルエンザに対してどうのような対策を講じればよいのだろう?”
2019年10月23日、塩野義製薬株式会社主催のメディアセミナー「インフルエンザの疫学と臨床」が開催され、池松 秀之先生(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 リサーチディレクター)がインフルエンザ疫学や薬剤耐性の現況について報告されましたので、簡単にお伝えしますね。
厚生労働省・千葉県・千葉医師会・千葉薬剤師会
今年の流行時期とインフルエンザの型は!?
人間に影響を及ぼすインフルエンザウイルスにはA型(亜型としてH1N1[ソ連型]、H1N1pdm、H3N2[香港型]など)とB型があります。基本的には1月下旬~2月上旬にA型が、それに遅れてB型がピークを迎えます。
しかし今年は、すでにB型の流行し始めています。という事は最悪、「 B型に感染したと思ったら、年明けにはA型に感染した…」という、連続してインフルエンザに罹る。なんて事もあり得る話です。
インフルエンザ、今年はどんなことに注意したらいい!?
昨年は「ゾフルーザ」(バロキサビル)の発売年だったこともあり、多くの医師がこの新薬(ゾフルーザ)を処方したため、シーズン後半になると"耐性ウイルス出現”などのネガティブな報告がクローズアップされ問題となりました。このことから、今年はゾフルーザ耐性ウイルスに対する治療薬選択への懸念が広がっています。
しかし、インフルエンザ研究班が臨床現場における成人での発熱や症状の改善やウイルスの残存率に関する調査によると、ゾフルーザでは治験時と同様の成績(ゾフルーザとタミフルでは、ゾフルーザのほうが早くウイルスが消失した)が得られたそうです。ですから、ゾフルーザのインフルエンザ治療薬としての有効性は間違いないと考えられます。
「ゾフルーザ」はCapエンドヌクレアーゼ阻害薬で、ほかの4剤(ノイラミニダーゼ阻害薬)とは違ってウイルスの増殖そのものを抑えるのが最大の特徴です。1回の服用で治療が完結するという利便性を背景に、昨シーズン、売り上げとシェアを大きく伸ばしました。
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の見解は以下の通りです。
- ゾフルーザに関していうと、治験生成期が臨床現場と相違なかったことから、ゾフルーザの治験データは信頼性がある。
- 5種類のインフルエンザ治療薬(リレンザ、タミフル、ラピアクタ、イナビル、ゾフルーザ)での平均解熱時間に差がなかったことから、成人の場合、どの薬剤を選択するかは各医師の患者に適切と思われる薬剤の選択でよい。
と述べています。
すなわち、医療機関の先生の指示に従ってインフルエンザ治療薬を服用することに、何の問題もありません。
日本感染症学会が提言した“慎重投与”に対する対応とは?
インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」は、耐性ウイルスが出やすいことが課題となっており、日本感染症学会はゾフルーザの使用方法ついて議論してきました。
「ゾフルーザについては、12歳未満の子どもは耐性ウイルスが大人より多く検出される傾向にあるため “慎重投与を検討”」としたほか、12歳以上については「データが乏しく、現時点では推奨するかどうかは決められない」としています。
一方で、日本感染症学会は、「ゾフルーザ」は広く使われてきた「タミフル」とは異なる効果があり、タミフルが効かない場合や、重症化が懸念される患者に使えるため、慎重に使用することで耐性ウイルスを広げないことが重要だとしています。
耐性に関しては、小児ばかりがクローズアップされていますが、高齢者でも変異ウイルスが一定の頻度で出ているので、今後注意を払っていく必要があると考えられます。
そろそろインフルエンザワクチン接種の時期です!
「インフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザに罹った…」
という話はよくありますよね。確かに、その年に摂取するワクチンは、“どんな遺伝子型のワクチンが流行るか?”を予測しワクチンを製造するため、すべての型のインフルエンザに有効であるとは言えません。しかし、インフルエンザに罹患した場合の症状や肺炎、脳症といった重症化を防ぐ効果があるので、特にお子様や高齢者の方にとっては有益であると考えられます。
この時期になると、巷では「ちょっと風邪っぽいけど、微熱だからインフルエンザじじゃないと思う~」なんて会話がちらほら聞こえますが、これ大間違いです!!
“インフルエンザは高熱が出る、関節痛がある、全身倦怠感がある”、と思っているそこのアナタ、、、
それ、間違てますから!!!!!
37度の微熱であっても、インフルエンザに感染している可能性は十分あります。
- インフルエンザが流行っている時期
- 身近にインフルエンザに罹っている人がいる、もしくは罹っていた人がいた
と言う場合は、たとえ微熱であってもインフルエンザに感染している可能性は十分あります。
インフルエンザの感染力は凄まじいです。
「微熱あるけど、全然平気~」なんて高をくくって、外出して、電車に乗って、学校に行って、会社に行って、、、なんてしていると、最悪なインフルエンサーになります。特に、妊婦さんや乳幼児、高齢者がインフルエンザに感染すると重症化したり、脳症や肺炎など重篤な合併症を引き起こす危険性が十分あります。
皆さん、インフルエンザに感染しない対策も重要ですが、大切な人にインフルエンザを移さない対策もしましょうね(^^)
原著論文
1)Carrat F, et al. Am J Epidemiol. 2008;167:775-785.
2)Ip DK, et al. CID. 2017;64:736.
参考文献・参考サイト
日本臨床内科医会:インフルエンザ診療マニュアル2019-2020年シーズン版(第14版)
参考資料
ケアネット
魚を摂取すると認知症リスクが低下する!
「さかな、さかな、さかなーーー、さかなーをー食べーるとーーー
あたま、あたま、あたまーーー、あたまーがー良くーなるーーー」
一昔前(20年位前?)にこんな歌、はやったの覚えていませんか?
まぁ、魚だけとってりゃ、一流大学に行けるとは思いませんが…。
みなさんは、
お魚料理は好きですか?
魚派?? 肉派??
私は色んな意味で肉食、いやいや羊の皮をかぶった狼系ですが、
毎日、サバ缶を食べてますよ(^^)
タンパク質を摂るなら、お肉か魚か、どっちがイイ?
なんて話をしている人を見かけたこともありますが、
お魚にはタンパク質以上に、私たち人間の身体にとって非常に有益な効果を与えてくれるんです。
そのひとつに、これからお話しする「認知症予防効果」があるんですよ!
魚の摂取で認知症リスクが低下する
魚類は、認知機能低下を予防する多くの栄養素を含んでいて、習慣的な魚類の摂取は、認知症発症リスクの低下に寄与する可能性が示唆されています。しかし、認知症発症と魚類の摂取を調査したプロスペクティブコホート研究は少なく、それらの調査結果は一貫していませんでした。
東北大学の靏蒔 望氏らは、魚類の摂取量と認知症発症リスクを評価するため、大崎コホート研究のデータを用いて検討をいました。*1 ベースライン時、65歳以上であった大崎市在住の住民を対象に、食物頻度アンケートを実施し、魚類やその他の食物摂取に関するデータを収集した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、多変量調整Coxモデルを用いた。魚類の摂取量を四分位に分け、最も少ない群をQ1、最も多い群をQ4とし、Q1を基準に認知症発症リスクを検討した。
研究結果を以下にまとめます。
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対象者1万3,102例中、5.7年のフォローアップ期間後における認知症発症は1,118例(8.5%)であった。
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魚摂取が最も少ない群(Q1)と比較した認知症発症HRは、でQ2で0.90(95%CI:0.74~1.11)、Q3で0.85(95%CI:0.73~0.99)、Q4で0.84(95%CI:0.71~0.997)であった(傾向性p値=0.029)。
-
フォローアップ期間の最初の2年間で認知症と診断された人およびベースライン時に認知機能が低下していた人を除外した場合でも、同様の結果が得られた。
魚の栄養素をまとめてみました
- DHA(ドコサヘキサエン酸):血栓を出来にくくしたり、脳細胞を活性化させる働きもあります。
- EPA(エイコサペンタエン酸):不飽和脂肪酸の一種です。脳梗塞や心筋梗塞などを予防する働きをもつと言われています。
- タウリン:血圧を正常に保ち、血栓や心筋梗塞を予防する。LDL-Cを減少させ、HDL-Cを増加する働きもあります。また視力の衰えを防ぐとも言われています。
- タンパク質:お肉の方が魚よりタンパク質が多いと思われがちですが、、、体内で利用させれる特にマグロやサンマ、イワシ、サケは内々で利用されるたんぱく質が牛肉や豚肉より多いとされています。
魚には認知症予防だけでなく、健康な身体をつくる栄養素が豊富
今回の研究結果では、健康な高齢者において、魚類の摂取量が多いと認知症発症リスクが低いことが認められたました。習慣的な魚類の摂取が、認知症予防に有益であることを示唆していると、言えますね。
しかも、認知症予防だけでなく、動脈硬化予防にもつながり、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクから身体を守ってもくれます。
良いことづくめの魚♡
みなさんも、積極的にお魚をとってみてはどうですか?
1日500ml以上の炭酸飲料を飲むと、死亡リスクが上昇する!?
炭酸飲料を飲んだだけで、死亡リスクが高くなる!?まさか~~~。。。
それって、砂糖を使った甘い炭酸飲料だけでしょ?って思いますよね。
実は、人工甘味料で甘くした炭酸飲料を1日当たりコップ2杯以上(500mlほど)飲むのも、健康には良くないらしいです。
砂糖や人工甘味料で甘くした炭酸飲料を1日当たりコップ2杯(約500mL)以上摂取する人は、1カ月に1杯未満しか摂取しない人と比べて死亡リスクが高くなることが、国際がん研究機関(フランス)のNeil Murphy氏らが実施した大規模研究で示されました。*1
Murphy氏らは、欧州10カ国の男女45万1,000人超を対象に集団ベースのコホート研究を実施。炭酸飲料の摂取と全死亡リスクおよび死因別死亡リスクとの関連を調べた。対象者の平均年齢は51歳で、追跡期間は平均16年だった。
1日コップ2杯以上の炭酸飲料を飲むと、死亡リスクが上昇するだけでなく、健康を害する危険性が高い!
研究の結果、1日コップ2杯以上(約500ml以上)の炭酸飲料の摂取で全死亡リスクが上昇することに加え、炭酸飲料の摂取量が多いと、さまざまな疾患による死亡リスクが増大することが示された。
これは、カロリーや砂糖、人工甘味料が添加されていない、いわゆる “炭酸水” は除外されています。
各炭酸飲料の摂取症が1カ月にコップ1杯未満の人と比較して
- 砂糖または人工甘味料が添加された炭酸飲料の摂取量が1日に1杯以上の人では大腸がんやパーキンソン病による死亡リスクが高かった。
- 砂糖入り炭酸飲料の摂取量が1日に1杯以上の人では消化器疾患による死亡リスクが高かった。
- 人工甘味料入りの炭酸飲料の摂取量が1日に1杯以上の人では心疾患などの循環器疾患による死亡リスクが高かった。
こうした炭酸飲料の摂取量の多さと死亡リスク上昇の関連は、BMIや喫煙の有無などの因子を除外して分析しても認められたそうです。
なぜ炭酸飲料の摂取により死亡リスクが高まるのだろうか・・・。
この研究を指揮した専門家によると、炭酸飲料は体重増加や肥満を招くだけでなく、ホルモンの一つであるインスリンの働きにも影響を及ぼし、炎症を引き起こす可能性があると指摘しています。こうした事が作用して、さまざまな疾患の原因となり、寿命の短縮につながるのではないかとの考えを示しています。
ただ、人工的に甘くした炭酸飲料がいかにして死亡リスクを上昇させるのかを突きとめるには、さらなる研究が必要でしょう。
buzz.media.netより
上の画像を見てお分かりになる通り、果糖飲料には砂糖に置き換えると、ペットボトル1本(約500ml)あたり、こんなにも白砂糖(糖質)が入っているんです。
この画像を見ると、ジュースを飲むのが怖くなりますね^^;
糖分には多糖類、二糖類、単糖類などがある。多糖類は多数の糖からできている高分子化合物。穀類や芋類に多く含まれるデンプンは多糖類で、糖分の中でも吸収は遅い。もっとも慣れ親しんでいる「砂糖」の多くは白く精製された白砂糖で、単糖類が2個結合した二糖類。一方、ブドウ糖や果糖(フルクトース)は1個の糖からできている単糖類で、糖分を構成している最小単位の物質。清涼飲料に多く使われている果糖は糖の中でも甘味が強く、すぐに吸収される。多量に摂取すると血糖値の上昇や中性脂肪の増加をまねくおそれがあ
る。
勿論、「コカ・コーラ ゼロ」とか、「ファンタ ゼロ」、「キリンメッツ ワイルドチャージ」などは、人工甘味料を使用しており、カロリーゼロで且つ、糖質はゼロです。
糖尿病の方やや糖質を気にされている方にとっては、糖質・糖類ゼロは、血糖値を上昇させない作用があるので、大変重宝されると思います。
しかし、糖質ゼロ、カロリーゼロであっても、人工甘味料で甘さが調節された炭酸飲料は死亡リスクを高め、様々な病気に掛かるリスクを高めていると言えます。
本研究により、甘い炭酸飲料と死亡リスクの因果関係が証明されたわけではなありませんが、炭酸飲料を飲むよりは、ミネラルウォーターや緑茶、ウーロン茶などの方が、“健康” という観点からすると、良いのでしょうね。
原著論文はこちら
Mullee A, et al. JAMA Intern Med. 2019 Sep 3. [Epub ahead of print]
*1:JAMA Internal Medicine」9月3日オンライン版
タバコを何年やめたら、病気になるリスクが減るのか!?
※pack-year:生涯喫煙量の単位。1日に何箱のタバコを何年間吸い続けたかをかけ合わせて計算する。1 pack-yearは、1日1箱を1年、または2箱を半年吸った量に相当。
研究方法
- 研究グループは、ベースラインで心血管疾患がなかったフラミンガム心臓研究の被験者で、2015年までに前向きに追跡収集されたデータについて後ろ向きに解析。
- 被験者は、オリジナルコホート(1954~58年に行われ4回の診察を受けた)3,805例と、子孫コホート(1971~75年に行われ初回診察を受けた)4,965例の計8,770例だった。
- 自己申告による喫煙の有無・禁煙後の経過年数・喫煙中の累計パック年を調べ、CVD(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死と定義)との関連を検証した。主要解析は、両コホート複合(プールコホート)で行い、ヘビースモーカー(20pack-year以上喫煙)について行った。
研究結果
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被験者8,770例の平均年齢は42.2歳で、45%が男性。そのうち喫煙経験者は5,308例で、ベースラインの喫煙累計(pack-year)の中央値は17.2 pack-yearだった。
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ヘビースモーカーは2,371例(追跡中に禁煙した元喫煙者406例[17%]、現喫煙者1,965例[83%])。
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追跡期間中(中央値26.4年)の初回心血管疾患イベント発生は2,435件だった。
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現喫煙者と比較して5年以内の禁煙者の心血管疾患罹患率は有意に低かった。
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罹患率は現喫煙者11.56 / 1,000人年に対し、禁煙5年未満者で6.94 / 1,000人年(同:5.61~8.59)だった。
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一方で非喫煙者の同罹患率は5.09/1,000人年で、それと比較すると喫煙者の心血管疾患リスクは、禁煙後10~15年で6.31/1,000人年になり、禁煙から10年以降でその関連が有意ではなくなったが、リスクとしては高いままであった。
喫煙による病気のリスクとは!?
- 禁煙を5年間行うと、心血管疾患になるリスクは現喫煙者と比べると4割減少します。しかし、喫煙歴のない人と比べると心血管疾患になるリスクは高い。
- 喫煙歴がない人々と比較すると、1日に1本しか喫煙しない人でも冠動脈疾患のリスクは高いそうです。
- 脳卒中のリスクも喫煙によって上昇することが明らかなようで、タバコを吸う本数が増えれば増えるほど脳卒中になるリスクは男女とも上昇します。一方で、1日1本しか吸わなくても脳卒中になる危険性は、喫煙歴のない人と比べると高くなります
- 肺がんに関しては、1日の喫煙本数と肺がんを発症するリスクの間にほぼ直線的な関係が見られており、1日に20本喫煙する人に比べ、1本しか吸わない人のリスクは約20分の1(5%)
このように、禁煙することによって、心血管疾患や脳卒中、肺癌になるリスクから身体も守ることが出来ます。
「一日一本だけだから、タバコ吸っても平気だよな~」と感じますよね? 私もそう思ってました。一本くらいのタバコ、禁煙と変わりないでしょ?
でも、研究結果によると違うみたいですね。
心筋梗塞や脳卒中のリスクに関しては、「タバコの本数が1日1本であっても、リスクは1日20本吸う人の半分程度にしか減らない」という分析結果がも報告されています。
あともう一つ。今、世間で取り上げられているのは受動喫煙による問題です。
受動喫煙とは、喫煙により生じた副流煙(タバコの先から出る煙)、呼出煙(喫煙者が吐き出した煙)を発生源とする、有害物質を含む環境タバコ煙に曝露され、それを吸入することです。
受動喫煙による日本人の肺がんリスクは約1.3倍になることが発表されており、科学的根拠のあるデータなのです。ヘビースモーカーの旦那さんと一緒に所帯を持っている奥様(タバコを一切吸わない奥様)が肺癌になってしまう…。といったような現象です。
奥様、旦那様、お子様、お孫様。愛する方を病気から守りたいですよね!
今からでも遅くありません! 禁煙の一歩を踏み出してみませんか?
正直、禁煙するのは本当に本当に難しい。
「バンジージャンプと禁煙、どっち選ぶ?」と聞かれたら、「バンジージャンプ…」と答える人が多いでしょう。
『禁煙するぞ!!』という強い意志の力を使って禁煙に挑むのは非常に困難です。
人間というものは、“何かを始める” 行為は、意志力で何とか始めることは出来ますが、
“何かを止める” という行為は、中々できません。私はタバコは吸いませんが、「甘いものを食べるな!」と言われたら無理です。ストレスで病院を欠勤するでしょう(笑)。
当院には禁煙外来もございます!(^^)!
1人では重い腰が上がらない、、、という皆さま。ぜひ当院へお越しください。
禁煙の一歩・・・一緒に踏み出しましょう(^^)
原著論文はこちら
Hackshaw A, et al. BMJ. 2018;360:j5855.
Duncan MS, et al. JAMA. 2019;322:642-650.
carenet参照
野菜中心の生活で糖尿病リスクを減らす!
さぁ、みなさん。ことわざ遊びしましょう♩
【問題】
①「〇〇どきの医者いらず」
②「冬至に〇〇〇を食べると風邪をひかない」
③「〇〇が赤くなると医者が青くなる」
④「〇〇は体の砂払い」
【解答】
①だいこん(大根)
②かぼちゃ(南瓜)
③かき(柿)
④こんにゃく(蒟蒻)
皆さん、どれくらい解けましたか?この“ことわざ”、何を表現しているかというと、“野菜って、身体に良いんだよ~~”って、事ですよね?野菜は健康にイイ、美容にイイと言いますが、本当なのかしら??ってな、疑問を解決してくれる論文を見つけました!
野菜中心の食生活が2型糖尿病のリスクを減らす!
米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のQi Sun氏らの研究によって、植物性食品中心の食生活を送っている人ほど2型糖尿病のリスクが低くなるという可能性が示されました。*1
研究内容2019年2月までに発表された論文のシステマティックレビューを行い、抽出された9件の前向きコホート研究についてメタ解析を実施。総計30万人以上の対象者のうち追跡中に約2万4,000人が2型糖尿病を発症していた。
研究結果
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植物性食品を主に摂取している人ではそうでない人に比べて2型糖尿病のリスクが23%低かった。
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野菜や果物、豆類、ナッツ類、全粒穀物など、食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを含む健康的な植物性食品を摂取している人ではその関連がより強く、糖尿病のリスクは30%低下していた。
1日、どれくらいの野菜と果物中心を摂るといいの?
上記に挙げた研究結果は、「野菜中心の食生活が2型糖尿病を発症するリスクを低下させる」という内容でしたが、野菜には糖尿病を防ぐ効能だけなのでしょうか?
厚生労働省は1日 350gの野菜を摂ることを勧めています。しかし、野菜は摂ればとるほど、その健康効果は高いとされています。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0326-10l-007.pdf
実は、欧米やアジア諸国のデータを集めたところ、野菜や果物を1日 600-800g
摂ると、心血管疾患発症率、がん発症率、全死亡率が明らかに減少するということも明らかにされました。とくに、葉物野菜、ブロッコリー、にんじん、かんきつ系の果物、リンゴ、ベリー系果物がいいそうです。
ただ、1日800gの野菜&果物って、相当な量ですよ(笑)
だいたい、ブロッコリー ひと房で200g、レタス 1個で500g弱(芯を含めて)、
リンゴ1個 315g・・・。
そう考えると、1日600~800gの野菜や果物を摂取するのは、一筋縄ではいきません。エンゲル係数も高くなりそう…。
https://academic.oup.com/ije/article/46/3/1029/3039477?searchresult=1
なぜ、野菜中心の生活が2型糖尿病のリスクを減らすのか!?
なぜ植物性食品を中心とする食生活が2型糖尿病のリスクを低減するのか?
その因果関係まで今回の研究で明らかになっていません。また、野菜中心の生活の人は“もともと、健康意識が高い”、“野菜中心だから肥満じゃない”。という考えも出来るでしょう。
しかし、野菜中心の食生活を送ることが、明らかに糖尿病のリスク低減に役立ち、さらに心血管疾患やがんの発症、全死因死亡率を低下させることは明白です。
今回の研究結果について、今回の研究の代表者のSun氏は
「抗酸化物質や健康に良い植物性油脂により、インスリン感受性が向上したり、炎症が抑制された可能性もある」と指摘しています。
「野菜中心の食生活」と聞くと、レタス、ホウレン草、にんじん、ブロッコリーだけか? なんて思われるかもしれませんが、クルミ、アーモンド、ピーナッツなどのナッツ類などのシンプルな食品もgood!!また、豊富な野菜たっぷりの野菜スープなども良いでしょう。
そうそう。ニンジンや大根、きゅうりなどを浅漬けにしたお漬物なんかは、発酵食品であることも加味されてさらに栄養価満点だと思います。
何か甘い物が欲しいな~。なんて思った時には、クッキーやケーキよりも果物などの方が健康的で1日に摂取する野菜(&果物)の量も増やすことが出来ます。
野菜のパワーって、凄いですね! 糖尿病、がん、心血管疾患など私たちが恐れている病気を防いでくれるのですから。まさしく、スーパーマンですね!
*1:JAMA Internal Medicine、7月22日オンライン版
座っている時間が長いと早死にする!?
だんだんと、過ごしやすくなってきましたね。
暑さも和らぎ、秋めいてきました…。
そうそう、季節は秋!!! さぁ~秋と言えば、、、
「食欲の秋」、「読書の秋」、、、
いえいえ、
「スポーツの秋」ですよーーー皆さん。
子供の頃と比べると、明らかに少なくなったのは、
運動している時間、立っている時間。
小学生のころ、お昼休みになると男の子に交じってドッジボールしてました!
私、腕力があって男の子に負けないほどの怪力だったんです(笑)
そんな私の事はさておき、、、
皆さん、暇が合ったら座っているより運動した方が、
電車では座るより立っている方が、
長生きするらしいですよ~。
座っている時間が長いほど、死亡リスクが高まる…こんな怖い論文を見つけたのでご報告しますね。
中高年の死亡リスクは身体活動が低い人ほど低い
中高年の死亡のリスクは、強度を問わず身体活動度が高いほど低く、また、座位時間が短いほど低いことが、ノルウェー・Norwegian School of Sport SciencesのUlf Ekelund氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析で明らかにされました。いずれも、中高年成人では、非線形の用量反応の関連パターンが認められたという。*1
身体活動度は、多くの慢性疾患や若年死亡と関連しており、座位時間が長いほどそのリスクが増す可能性を示すエビデンスが増えつつある。しかし、現行の身体活動ガイドラインは、妥当性に乏しい自己報告の試験に基づいているため、報告されている関連性の大きさは、過小評価されている可能性があり、また、用量反応の形状、特に軽強度身体活動は明らかになっていなかった。
研究方法はシステマティック・レビューのメタ解析
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研究グループは、医学・ライフサイエンスなどの文献(PubMed、PsycINFO、Embase、Web of Science、Sport Discus)をまとめ、2018年7月までに発表された試験について、システマティック・レビューとメタ解析を行った。
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データベースを基に、対象は、身体活動度や座位時間について加速度測定法で評価し、全死因死亡率との関連を評価した前向きコホート試験で、ハザード比やオッズ比、相対リスクを95%信頼区間(CI)とともに求めたものとした。
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解析の手法は、システマティック・レビューとメタ解析に関するガイドラインや、PRISMAガイドラインにのっとった。執筆者2人がそれぞれタイトルと要約をスクリーニングし、1人が全文のレビューを、もう1人がデータを抽出した。バイアスリスクは2人がそれぞれ評価した。
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参加者個人レベルのデータを、複数の補正後モデルを用いた試験で集約・解析した。身体活動のデータは4つに分類し、全死因死亡率(主要評価項目)との関連についてCox比例ハザード回帰分析を用いて解析。ランダム効果メタ解析により試験に特異的な結果を要約した。
軽強の運動でも、死亡率は約0.4倍まで低下
検索により全文レビューとなった39試験のうち、包含基準を満たしたのは10試験だった。うち3試験はデータの集約が困難。さらに1件は非参加のため除外された。代わりに、死亡率未公表のデータを含む2試験を包含し、計8試験の個人データを解析した。
- 被験者総数は3万6,383例、平均年齢62.6歳、女性は72.8%だった。追跡期間の中央値は5.8年(範囲:3.0~14.5)で、死亡は2,149例(5.9%)だった。
- 身体活動はその強度にかかわらず死亡率の低下に関連しており、非線形用量反応が認められた。死亡に関するリスクは、身体活動が多くなるほど低くなった。
- 同様に軽強度身体活動では、第1四分位群に比べ、第2四分位群0.60(95%CI:0.54~0.68)、第3四分位群0.44(0.38~0.51)、第4四分位群0.38(0.28~0.51)だった。中強度~高強度身体活動では、それぞれ0.64(0.55~0.74)、0.55(0.40~0.74)、0.52(0.43~0.61)だった。
- 座位時間と死亡に関するリスクについてみると、座位時間が長くなるほど死亡リスクが上昇した。
これは、いわゆる “積極的な運動” じゃなくても、座っているより、立っている時間が長い方が死亡率が低下するという結果を表しています。
運動強度の高い運動(マラソンや水泳などの辛い運動)でなくても、例えば
- 自宅で座っているより、立っている時間を増やす
- ご近所への買い物なら車でなく歩いたり自転車で行く
- エレベーターやエスカレータを使うより階段を使おう
- 電車では座るより、立っていよう
という、ごくごく日常にありふれた生活習慣を見直しましょう!という事なのですよね。運動が苦手な人や運動嫌いなひとにとっては、ありがたい研究結果でしたね!