今年のインフルエンザ予報発表!!~ゾフルーザとの付き合い方も含めて~
寒さも本格的になってきました!皆さん、お風邪など召されていませんか??
この時期、世間を賑わし始めるのが『インフルエンザ』。
当院でも、インフルエンザのワクチン接種にいらっしゃる患者さんが増えてきました。そこで、今季のインフルエンザの特徴や対策方法について、皆さんにお知らせしようと思います。
インフルエンザは、例年12月から3月にかけて流行していますが、東京都が9月26日付でまとめた報告書では、"今季は昨年と比べても11週早い流行目安を迎えている”と言っています。異例ともいえる速さでの流行開始に、都は早めの注意と対策を呼び掛けています。
“今年はインフルエンザに対してどうのような対策を講じればよいのだろう?”
2019年10月23日、塩野義製薬株式会社主催のメディアセミナー「インフルエンザの疫学と臨床」が開催され、池松 秀之先生(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 リサーチディレクター)がインフルエンザ疫学や薬剤耐性の現況について報告されましたので、簡単にお伝えしますね。
厚生労働省・千葉県・千葉医師会・千葉薬剤師会
今年の流行時期とインフルエンザの型は!?
人間に影響を及ぼすインフルエンザウイルスにはA型(亜型としてH1N1[ソ連型]、H1N1pdm、H3N2[香港型]など)とB型があります。基本的には1月下旬~2月上旬にA型が、それに遅れてB型がピークを迎えます。
しかし今年は、すでにB型の流行し始めています。という事は最悪、「 B型に感染したと思ったら、年明けにはA型に感染した…」という、連続してインフルエンザに罹る。なんて事もあり得る話です。
インフルエンザ、今年はどんなことに注意したらいい!?
昨年は「ゾフルーザ」(バロキサビル)の発売年だったこともあり、多くの医師がこの新薬(ゾフルーザ)を処方したため、シーズン後半になると"耐性ウイルス出現”などのネガティブな報告がクローズアップされ問題となりました。このことから、今年はゾフルーザ耐性ウイルスに対する治療薬選択への懸念が広がっています。
しかし、インフルエンザ研究班が臨床現場における成人での発熱や症状の改善やウイルスの残存率に関する調査によると、ゾフルーザでは治験時と同様の成績(ゾフルーザとタミフルでは、ゾフルーザのほうが早くウイルスが消失した)が得られたそうです。ですから、ゾフルーザのインフルエンザ治療薬としての有効性は間違いないと考えられます。
「ゾフルーザ」はCapエンドヌクレアーゼ阻害薬で、ほかの4剤(ノイラミニダーゼ阻害薬)とは違ってウイルスの増殖そのものを抑えるのが最大の特徴です。1回の服用で治療が完結するという利便性を背景に、昨シーズン、売り上げとシェアを大きく伸ばしました。
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の見解は以下の通りです。
- ゾフルーザに関していうと、治験生成期が臨床現場と相違なかったことから、ゾフルーザの治験データは信頼性がある。
- 5種類のインフルエンザ治療薬(リレンザ、タミフル、ラピアクタ、イナビル、ゾフルーザ)での平均解熱時間に差がなかったことから、成人の場合、どの薬剤を選択するかは各医師の患者に適切と思われる薬剤の選択でよい。
と述べています。
すなわち、医療機関の先生の指示に従ってインフルエンザ治療薬を服用することに、何の問題もありません。
日本感染症学会が提言した“慎重投与”に対する対応とは?
インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」は、耐性ウイルスが出やすいことが課題となっており、日本感染症学会はゾフルーザの使用方法ついて議論してきました。
「ゾフルーザについては、12歳未満の子どもは耐性ウイルスが大人より多く検出される傾向にあるため “慎重投与を検討”」としたほか、12歳以上については「データが乏しく、現時点では推奨するかどうかは決められない」としています。
一方で、日本感染症学会は、「ゾフルーザ」は広く使われてきた「タミフル」とは異なる効果があり、タミフルが効かない場合や、重症化が懸念される患者に使えるため、慎重に使用することで耐性ウイルスを広げないことが重要だとしています。
耐性に関しては、小児ばかりがクローズアップされていますが、高齢者でも変異ウイルスが一定の頻度で出ているので、今後注意を払っていく必要があると考えられます。
そろそろインフルエンザワクチン接種の時期です!
「インフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザに罹った…」
という話はよくありますよね。確かに、その年に摂取するワクチンは、“どんな遺伝子型のワクチンが流行るか?”を予測しワクチンを製造するため、すべての型のインフルエンザに有効であるとは言えません。しかし、インフルエンザに罹患した場合の症状や肺炎、脳症といった重症化を防ぐ効果があるので、特にお子様や高齢者の方にとっては有益であると考えられます。
この時期になると、巷では「ちょっと風邪っぽいけど、微熱だからインフルエンザじじゃないと思う~」なんて会話がちらほら聞こえますが、これ大間違いです!!
“インフルエンザは高熱が出る、関節痛がある、全身倦怠感がある”、と思っているそこのアナタ、、、
それ、間違てますから!!!!!
37度の微熱であっても、インフルエンザに感染している可能性は十分あります。
- インフルエンザが流行っている時期
- 身近にインフルエンザに罹っている人がいる、もしくは罹っていた人がいた
と言う場合は、たとえ微熱であってもインフルエンザに感染している可能性は十分あります。
インフルエンザの感染力は凄まじいです。
「微熱あるけど、全然平気~」なんて高をくくって、外出して、電車に乗って、学校に行って、会社に行って、、、なんてしていると、最悪なインフルエンサーになります。特に、妊婦さんや乳幼児、高齢者がインフルエンザに感染すると重症化したり、脳症や肺炎など重篤な合併症を引き起こす危険性が十分あります。
皆さん、インフルエンザに感染しない対策も重要ですが、大切な人にインフルエンザを移さない対策もしましょうね(^^)
原著論文
1)Carrat F, et al. Am J Epidemiol. 2008;167:775-785.
2)Ip DK, et al. CID. 2017;64:736.
参考文献・参考サイト
日本臨床内科医会:インフルエンザ診療マニュアル2019-2020年シーズン版(第14版)
参考資料
ケアネット