アップルウォッチ(腕時計)で心房細動を発見できる日がやってきた!? ~あなたの心臓を守ります!~
2018年9月、Apple(アップル)社製のウェアラブル端末、アップルウォッチseries4で心電図を記録できる機能が搭載され、同年12月よりアメリカで提供開始となりました。しかし日本国内では、改正医薬品医療機器等法(薬機法)の障壁があり、実用化の見通しが不透明だったのです。
しかしAppleは1月27日、「iOS 14.4」と「watchOS 7.3」の正式版をリリースし、ようやく、本邦においてもウェアラブル端末「Apple Watch」の心電図機能が解禁となりました。
これにより、心房細動などの不整脈を検知することが可能となり、すべての記録、記録の分類、注意が必要な症状は、iPhoneのヘルスケアアプリケーションに保存され、結果はPDFというファイルで医師と共有することが出来るのです。
ただし、心電図を記録できるアップルウォッチは、電気心拍センサーが搭載されている、Apple Watch Series 4/5/6に限ります。
※なお、Apple Watch Series 3では心電図測定機能は搭載してないものの、光学式心拍センサーを利用することで、不規則な心拍を通知する機能も実装されている。
アップルウォッチで心房細動を検出できる!
アップルウォッチで心電図が記録できる私たちのメリットは何かというと、言わずもがな、『不整脈の検出が行える』であります。
通常、不整脈は症状があってから病院の外来を受診し、検査(十二誘導心電図、ホルター心電図)を行うのが一般的です。
しかし、この場合、検査しているその瞬間やある一定期間内に不整脈が発生していないと、医師は不整脈が起きていると認識できず、確定診断を付ける事が難しい…。結果的に心房細動などの治療が遅れる・・・という事になりかねません。これでは、患者さんは心臓を検査したことによる恩恵を全く受けていない事になります。
しかし、アップルウォッチは違います!!!
何が違うかと言うと、24時間、365日、患者さん自身で心電図を記録できる点です(寝る時もお風呂に入るときも、装着している人は少ないかもしれませんが…)。
とは言っても、、、アップルウォッチで本当に心電図なんて測れるの??
眉唾ものだと、思っている読者の方も多いはず。
この不安を解明してくれたのが、米国・スタンフォード大学のMarco V. Perez氏らが、約42万人を対象に行ったApple Watchの検出する不規則脈波と心房細動の一致を検討した大規模臨床研究Apple Heart Studyです(NEJM誌2019年11月14日号で発表)。
この大規模試験の結果を簡単にご報告しますね。
試験対象と目的
研究グループは2017年11月29日~2018年8月1日にかけて、自己申告で心房細動の既往がなく、アップル製のスマートウォッチとスマートフォンを所有している22歳以上男女。
スマートウォッチベースの不整脈通知に関するアルゴリズムが心房細動の可能性があると識別した場合、遠隔診療が開始となり、対象参加者にECGパッチを郵送して最長7日間装着してもらった。さらにその後、不整脈通知の90日後と試験終了時に調査を行った。
試験の主目的は、スマートウォッチの不整脈通知を受けた参加者のうちECGパッチで心房細動が認められる割合と、脈拍間隔不整の陽性適中率(標的信頼区間0.10)を推算することだった。
試験結果
- 試験には41万9,297例が参加。
- モニタリング期間中央値は117日で、その間に2,161例(0.52%)がスマートウォッチの不整脈通知を受け取った。
- ECGパッチは、通知をしてから平均13日後に装着され、解析可能データを含むECGパッチデータをメール返信した450例中、34%で心房細動が認められた。65歳以上の参加者についてみると、その割合は35%だった。
- スマートウォッチの不整脈通知を受け取った参加者において、その後にスマートウォッチの不整脈通知とECGによる心房細動が同時に観察される陽性適中率は、0.84だった。不整タコグラムとECGで心房細動が同時に観察される陽性適中率は、0.71だった。
- スマートウォッチの不整脈通知から90日後の調査で回答(メールで返信)した1,376例のうち、57%が同試験の外部の医療者とコンタクトをとっていた。
ユーザーの34%が実際に心房細動であった
特筆すべきは、このアップルウォッチの精度であり、アプリから通知を受けたユーザーの34%が実際に心房細動であると診断されたのです。
この何が凄いか!?というと、この試験に登録された人は全員、心房細動の自覚がなかった、若しくは心房細動と診断されたことがない人です。にもかかわらず、アップルウォッチによって心房細動と診断された人がいるわけですから、このアップルウォッチは医者いらず…?ではなく、アップルウォッチの診断精度が非常に高いということが分かります。
しかも心房細動の何が怖いかと言うと、心臓の中にできた血栓が脳の血管に詰まって脳梗塞となる可能性が非常に高い。という事なのです。突然大きな 血管が詰まるため、場合によって命に関わるだけでなく、仮に一命を取りとめても言葉が出なくなったり 手足の麻痺などの重篤な後遺症を残したりすることがあります。
今まで一度も医療機関を受診しなかった人のなかに、新規心房細動を検出できるというのは特筆すべきことであると思います。さらに行ってしまえば、アップルウォッチを装着したことによる有害事象は0(ゼロ)であったのです。
まとめ
アップルウォッチの最大の特徴は、一回で終わってしまう病院の検査や診察室でのバイタルチェックとは異なり、24時間365日、測定したいとき・症状が出た時に心電図(心拍数)を記録できる点です。さらにアップルウォッチでは心電図のデータがどんどん蓄積されるため、データ量が根本的に異なります。これは、アップルウォッチは私たちの個々の行動パターン(歩行パターン、食事パターン、睡眠サイクル)などとも連動しているので「どんな活動パターンの時に心房細動が起こっているのか?」「不整脈が起こっている時間帯は?」「外出時か?仕事中か?睡眠中か?」など、不整脈出現と行動様式とを連動して捉えることも可能となる。
今後も、アップルウォッチの心電図機能を代表としたヘルスケアデバイスはどんどん普及していく予感がします!
さぁ~、次回はそのアップルウォッチの具体的な心電図記録の操作法についてお伝えしますね。
参考
ケアネット