現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

Apple watchで心房細動が検出できる時代がやってきた!!

『心房細動』という不整脈について、ご存知でしょうか?

不整脈というと、怖いイメージを抱かれるもしれません。

心房細動という不整脈は、動悸やふらつき、時には失神の原因にもなり ますが、まったく症状のないことも多く、心房細動だけでは必ずしも生命に関わるような危険な不整脈ではありません。しかし、もともと心臓に病気をもっている方(心筋梗塞を起こしたことがある方、心肥大と言われている方など)では、息切れや疲れやすさなど心不全症状の原因となることがあります。

むしろ、心房細動で問題となるのは、心臓の内部(特に左心房)に血の固まり(血栓)ができ、それがあるとき突然はがれて脳の動脈に流れ込み、脳梗塞(心原性脳塞栓症)が起こる危険性が高いことです。

 

www.ncvc.go.jp

 

心房細動の早期発見は、血栓塞栓症(脳梗塞、肺梗塞など)を未然に防ぐという観点からも非常に重要です。それは、心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍高いと言われているからです。しかし残念ながら、脳梗塞を契機に心房細動が発見されるという患者様が多いのです。

脳梗塞を未然に防ぐためにも、心房細動を早期検地できるシステムは非常に重要なのです。

 

心房細動を早期検知する時計の登場

今回、皆さまにお届けしたい内容は、いかに心房細動を早期発見できるか!!です。

今回は、Apple Watchを用いた心臓モニターに関する論文をご紹介しようと思います。

 米国のApple(アップル)社が提供する、デジタル時計:スマートウオッチApple Watch Series 4)には、心電図機能が搭載されています。この心電図を計測する技術(KardiaBand)によって、専用バンドとアプリを組み合わせることで、自動で心房細動を検知することが可能なのです。

米国クリーブランド・クリニックのJoseph M.Bumgarner氏らの研究グループは、医師による12誘導心電図とKardiaBandの記録の解釈と比較し、KardiaBandが洞調律とAFとを正確に判別できるかを検討しました。*1



除細動で受診したAF患者100例で比較
  1. 対象は、AFに対する除細動のために受診した、連続した患者100例(68歳±11歳)。
  2. 患者は除細動前に心電図とKardiaBandの記録を受けた。
  3. 除細動が行われた場合、除細動後の心電図とKardiaBandの記録が取得された。
  4. KardiaBandの解釈は、医師の診断による心電図と比較された。
  5. KardiaBandの記録は、患者情報を知らない不整脈専門医によって再度診断を受け、心電図の解釈と比較された。感度、特異度とK係数が求められた。

*除細動:心房細動を停止させるために行う直流電気ショックによる治療の一種

 

169例のKardiaBandの記録のうち57例は解釈不能
  • 100例中8例は除細動を受けなかった。
  • 169例について、心電図とKardiaBandの同時記録が得られた。
  • KardiaBandの記録のうち、57例については解釈不能であった。
  • 心電図と比較してKardiaBandが解釈した記録は、感度が93%、特異度が84%、K係数は0.77であった。
  • 一方、医師が解釈したKardiaBandの記録は感度99%、特異度は83%、K係数は0.83であった。
  • 解釈不能だった57例のKardiaBandの記録について不整脈専門医が診断したところ、感度100%、特異度80%、K係数は0.74であった。
  • KardiaBandと医師ともに診断可能であった113例においては、双方の診断はかなり一致しており、K係数は0.88であった
 
医師のサポートによりKardiaBandによるAF検知アルゴリズムは有用

 医師によって確認されたKardiaBandのAF検知アルゴリズムは、AFと洞調律の正確な区別が可能でした。この技術は、選択的除細動に先立って患者をスクリーニングする際に役立ち、不必要な手技を回避する一助となりうる可能性があると考えられます。

 

 

Apple Watchによって心房細動を発見し、脳梗塞のリスクを回避できた!!

実は、日本にもAppleWatchに搭載された、『心拍数測定機能』を利用して、心房細動を発見できた方もいるそうです。

 

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https://jisuijisan.com/how-did-apple-watch-find-my-disease/

 

jisuijisan.com



 

Apple Watchで心房細動を早期発見!!

心房細動には慢性心房細動と発作性心房細動があります。慢性心房細動のほうが脳梗塞になり易いといわれていましたが、色々な研究の結果から、発作性心房細動においても脳梗塞の発生頻度はかわらないといった報告がなされています。

発作性心房細動はその名の通り、常に心房細動を発生している訳ではありません。ですから、「なんだか胸がドキドキする、違和感がある。」と思って専門の心電図検査をしても、心房細動が発見できないケースもあります。

AppleWatchにような時計は外出するときも、自宅にいる時も常に身につけておく事が出来ます。ですから、「何だか動悸がする、胸に違和感がある」と感じたとき、このAppleWatchの機能を使えば、心房細動を発見でき、脳梗塞のリスクから回避できる可能性もあるのです。

現在、AppleWatchの最新機種はSeries4です。このSeriesには、心電図機能が搭載されているのですが、残念ながら日本においては同機能は封印されているんです。

心電図機能が、なぜ日本で使えないのかといと、心電計は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に則っているからです。Apple Watchの心電図機能は、恐らく薬機法における管理医療機器項目の「特定保守管理医療機器」としての認証(ソフトウエアも含む)が必要なのですよね。なので承認などの問題があるのだと思います…。

そういっても、日本で発売されているAppleWatchでも心拍数はリアルタイムで測定可能です。この心拍数を利用して心房細動の早期発見をすることは可能です!

テクノロジーの進化って、本当に凄いですよね!!!

 

あっ!! 皆さん、私はApple社の社員でも、回し者でもないですからね~(^^;)

純粋に、科学的根拠を元にしたデータをご報告しているだけですよ!!

それでは皆さん、またお会いしましょう♩ 

 

原著論文

Bumgarner JM, et al. J Am Coll Cardiol. 2018 Mar 7. [Epub ahead of print]

*1:Journal of American College of Cardiology誌2018年3月号