現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

加糖飲料の摂取でがんのリスクが増大する!

皆さん、こんにちは!暑い日が続ますが、いかがお過ごしですか?

暑い季節、冷た~いジュースをごくごくしたいもんですよね? コーラ、スポーツ飲料、フルーツジュース。火照った身体に染みますよね~!!

でもちょっとまった!!!

もしかしたらその行為、がんの発症リスクを上げているかもしれません(汗) 


今回は、ジュースと健康被害について、がんに焦点をあてて科学的根拠に基づいたお話していこうと思います。実は、砂糖入り飲料だけでなく、100%ジュースの健康被害も報告されているんですよ! 

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砂糖入り飲料の摂取は、“がん”および“乳がん”のリスクを増加させる

砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連することが、フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らのによって報告されました。*1 砂糖入り飲料の消費は最近10年で世界的に増加していおり、砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認めらるそうです。さらにこの肥満は多くのがんの強力なリスク因子となるのです。
どのような研究によって、砂糖入り飲料とがん発症との関連が明らかになったのか、具体的にお話していきますね。


フランス人を対象とした大規模コホート研究
  • 研究に用いた飲料水は、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料。それらからサンプルをとってがんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った。
  • 解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始されたNutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。
  • 砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、3,300項目の食品および飲料に関して、参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた反復的24時間食事記録法を用いた。飲料のタイプごとに、男女別の消費量をそれぞれ4段階に分けて解析した。
  • 最終的には、飲料の消費と全がん、乳がん前立腺がん、大腸がんの関連性を評価して、競合リスクを考慮し、多変量で補正したFineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、部分分布のハザード比(HR)を算出しました。

約5年間観察した結果
  • 10万1,257例、平均年齢42.2歳(年齢は14歳前後のばらつきあり)のうち、女性が7万9,724例(78.7%)を占め、男性は2万1,533例(21.3%)であった。
  • 飲料種類の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。
  • 追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症。
  • がんの内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。
  • 砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。
  • 砂糖入り飲料の消費は、前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、統計学的検出力がきわめて低かった。

 

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砂糖入り飲料、100%果物飲料の摂取でがんの発症が高くなる

今回の研究結果から砂糖入り飲料や100%果物飲料の摂取が、がんの発症リスクを増加させるということが分かりました。一方で、人工甘味料入り飲料の摂取はがんとは関連性はなかったようです(全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かったことから、統計学的検出力が不十分であった可能性もありうる)。

サブ解析では、100%果物ジュースの摂取は全がんの発症リスクと有意な関連性があることも明らかになりました。

砂糖入り飲料が、健康によろしくない・・・というのは何となく予想がつきましたが、まさか、健康のために飲んでいる100%果物ジュースにも、がんを発症させるリスクがあるというのは驚きの結果です!

 

実は100%果物飲料(濃縮還元100%フルーツジュース)、米国では『不健康な食品のひとつ』とされているそうです。

米国小児科学会では、乳幼児に対するフルーツジュース摂取の提言も発表しているのですよ。同学会員の医学博士の中には、「子供に100%フルーツジュースを飲ませるべきでない!」といっている専門家もいます。

 

forbesjapan.com

 

数年前でしたでしょうか・・・。“グレープフルーツジュースを飲むと痩せる”とか、“血圧を下げる” という内容が巷の話題をかっさらって、グレープフルーツジュースがスーパーからなくなった!なんて話もありましたよね。それが科学的に根拠があるかどうか、否めませんが…。

少なくとも、高血圧の薬(血圧を下げる薬)を飲んでいる患者さんは、かんきつ系のジュース(グレープフルーツジュース、オレンジジュース等)を飲むのは避けて下さいね!薬とジュースとの相互作用で、必要以上に血圧が下がってしまう原因になることもありますから。

 

水分補給するなら、ジュース(砂糖入り飲料、100%果物飲料)より、ミネラルウォーターやウーロン茶、緑茶の方が、少なくともがん発生リスクとは、関連してなさそうですね!ただ、ウーロン茶や緑茶にはカフェインが入っているので、睡眠前の摂取は避けた方が、イイ睡眠をとることが出来ると思いますよ!

 

 

原著論文

Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408.

https://www.carenet.com/news/journal/carenet/48378

*1:BMJ誌2019年7月10日号