糖尿病患者さんに警笛!~摂取する脂肪の質が死亡リスクを左右する!?~
糖尿病患者における脂肪の質が死亡のリスクと関連
脂肪酸について
研究方法・結果
米国の2つの大規模コホートから2型糖尿病患者約1万1千例を解析-
研究グループの目的は、2型糖尿病患者における食事中の脂肪と心血管死および全死亡との関連を評価すること。
-
米国のNurses' Health Study(1980~2014年)およびHealth Professionals Follow-up Study(1986~2014年)の2型糖尿病患者1万1,264例について解析した。
-
参加者は、食事中の脂肪の摂取について、食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いた2~4年ごとの調査を受けていた。
-
主要評価項目は、追跡期間中の全死亡と心血管死。
-
Cox比例ハザードモデルを用い、食事中の脂肪の摂取量と主要評価項目との関連について解析した。
研究結果
- 多価不飽和脂肪酸、オメガ3系(α-リノレン酸)、オメガ6系(リノール酸)の高摂取は低摂取より心血管死が2~3割低下。追跡期間中、死亡は2,502例(うち心血管死646例)が確認された。
- 多変量解析の結果、多価不飽和脂肪酸の摂取は全炭水化物と比較し心血管死のリスク低下と関連していた。
- 摂取量の第1四分位と比較した第4四分位のハザード比(HR)は、多価不飽和脂肪酸で0.76倍、海産物由来のオメガ3系(EPA, DHA)で0.69倍、オメガ3系(α-リノレン酸)で1.13倍、オメガ6系(リノール酸)で0.75倍であった。
- 全死亡についても、多価不飽和脂肪酸、オメガ3系(α-リノレン酸)、オメガ6系(リノール酸)で同様の関連が確認されたが、植物性ではなく動物性の一価不飽和脂肪酸は全死亡のリスク増加と関連していた。
- 飽和脂肪酸(バター、肉の脂肪)からのエネルギーの2%を、多価不飽和脂肪酸またはリノール酸からの同等のカロリーに置き換えると、多価不飽和脂肪酸が13%、オメガ6系(リノール酸)5%(HR:0.85、95%CI:0.73~0.99)、それぞれ心血管死のリスクが低下した。
- 飽和脂肪酸(バター、肉の脂肪)からのエネルギーの2%を多価不飽和脂肪酸に置き換えると、全死亡のリスクが12%低下した。
なお著者は、血糖コントロールや糖尿病の重症度は評価されていないこと、食事や生活習慣の要因が自己報告であること、残余交絡の可能性などを研究の限界として挙げている。
この結果から分かったことは、2型糖尿病患者さんにおける、お肉(脂肪分)やバターの摂りすぎは、死亡率や心血管疾患の発症リスクが高くなる。という事なのですよ…。糖質制限で口酸っぱく言われている内容(糖質を控えるぶん、お肉などの脂肪はどれだけとってもいいですよ~)とは、若干異なりますよね(汗)
また、赤身のお肉や、油で炒めた食品などは、糖尿病の発症リスクも高めるといわれています。
ダイエット目的で糖質制限をする。糖質制限をしてるから、お肉はどれだけ食べてもOK~! という考えでお肉を食べすぎていると、逆に心血管疾患や糖尿病を発症する危険性があるかもしれない・・・。という事なのですよね。
「飽和脂肪酸は体に良くない」とお話ししましたが、飽和脂肪酸の中でも、ヨーグルトや低脂肪牛乳は糖尿病の発症リスクを低下させるという研究データもあります。ですから、ヨーグルトの摂取を控える必要はないかもしれませんね。
糖尿病患者さんの食事ガイドラインでは、良好な健康を維持するためにトランス脂肪の摂取を減らし、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることを推奨しています(BMJ誌2019年7月2日号掲載の報告)。
大切なのは、バランスよく食べること。「単品ダイエット」とか、「糖質制限食」で糖質を極端に下げる一方で、赤身肉はどれだけ食べてもOK。なんてのは、ナンセンスという事ですね。
ここで忘れてほしくないのは、「良質な油を摂取する大切」という事。オリーブオイルや魚の油(DHA、EPA)には動脈硬化や心筋梗塞を予防すると言われています。しかし、トランス脂肪酸(マーガリン、お菓子、総菜パン)などの摂取は控えたほうが、健康のためであるのは間違いないことだと思いますよ。
原著論文はこちらJiao J, et al. BMJ. 2019;366:l4009.