現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

たった一日の睡眠不足で糖尿病、肥満リスクが上昇

みなさん、こんにちは(^^)

今朝の目覚めはどうでしたか?よく眠れました? 気持ちよく目覚めれましたか?

どうしてこんなことを聞くかって???

それは、睡眠の質が病気の発症と深く関連しているからなんです。

生活習慣病にならないために、運動をしたり、食事療法をした、、、色々試みているかたも多いはず!

でも、健康になる近道はもっと簡単なところにあるかもしれませんよ!!

 

日本人は慢性的な睡眠不足

平均睡眠時間の国際比較によると、日本人の平均睡眠時間は7.4時間とOECD諸国の中でも一番短い。また、日本人の5人に1人は「日中、眠気を感じた」「睡眠時間が足りなかった」「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」など睡眠の問題を抱えている人が非常に多いのが現状です。

 

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たった一日の睡眠不足で、糖尿病リスクが上昇

たった一晩の睡眠不足でも血糖やインスリンの制御に関わる肝臓の機能が変化し、2型糖尿病の発症リスクが上昇する可能性があることを、東邦大学糖尿病・代謝・内分泌学准教授の熊代尚記氏らの研究グループがマウスを用いた実験で突き止めました。*1

 

今回の実験ではマウスを2つのグループに分け、一方のグループは夜行性のマウスが眠る日中の時間帯に優しく揺すって6時間覚醒させ続け、もう一方のグループは自由に睡眠を取らせる対照群とした。実験を始める前の2週間は、食生活が乱れた人と同じような食環境とするために、いずれのグループのマウスにも高脂肪食と砂糖水を制限なく与えた。また、実験中にはいずれの群のマウスも小さな固定器の中で動けない環境に置き、活動量を制限した。

今回の研究結果のまとめ
  1. 6時間の睡眠障害の直後にマウスの血糖値と肝臓の脂肪量を測定したところ、自由に睡眠を取った対照群に比べて、睡眠時間を制限した群では血糖値が有意に高く、肝臓中の中性脂肪含有量が有意に増加していることが分かった。
  2. 睡眠時間を制限した群ではな血糖値の上昇が認められ、脂肪肝によるインスリン抵抗性が引き起こされていることが示唆された。
  3. メタボローム解析を用いて肝臓内の代謝物を網羅的に調べた結果、睡眠時間を制限した群では対照群に比べてアシルカルニチンやアセチルCoA、ケトン体などが増加しており、肝臓での脂肪燃焼は亢進していることが明らかになった。
  4. 一方、マイクロアレイを用いて肝臓の遺伝子発現を網羅的に調べた結果、肝臓での脂肪合成を促進する遺伝子の発現が増加しており、睡眠障害により過食や体重増加を伴わずに肝臓の脂肪蓄積が増加するメカニズムとして、睡眠不足による肝臓での脂肪合成の促進が示唆された。

 

‟肝臓での脂肪燃焼が亢進”というのは、‟肝臓で脂肪合成が進んで脂肪が蓄積する”という事であり(脂肪肝につながる、)体内での脂肪燃焼が進むという事ではないのでご注意を!!

 

以上の結果を踏まえると、たった1日睡眠不足になるだけで、肝臓で脂肪合成が亢進して脂肪蓄積が増加する。そして、脂肪肝が肝臓のインスリン抵抗性を引き起こして耐糖能を悪化させる可能性がある(=2型糖尿病を発症、あるいは悪化させるということ)と推測されます。

 

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たった一晩の睡眠不足で肥満リスクがが上昇

健康な男性が一晩徹夜するだけでも、骨格筋は分解されて、脂肪が体に貯め込まれることが遺伝子レベルの解析で示唆されたそうです。*2

 これまでの研究で、不眠や夜勤などで睡眠不足になると肥満や2型糖尿病などの発症リスクが高まることが報告されているのですが、このことに関する分子レベルでのメカニズムはほとんど分かっておらず、これらの代謝性疾患リスクが上昇するのは睡眠不足が直接的な原因なのかどうかは解明されていなかったのです。

ノースウェスタン大学のJonathan Cedernaes氏らが行った研究では、たった一晩でも睡眠不足になると肥満につながるメカニズムの一端を解明したのです。

研究内容

平均年齢22.3歳の健康な男性15人に研究室に2泊してもらい、一晩徹夜すると遺伝的または生理学的に代謝がどのように変化するのかを調べる実験を行いました。

まず参加者には、

1日目の晩には、8.5時間の睡眠を取ってもらう。

2日目の晩には、一晩中眠らずに徹夜してもらう群と8.5時間の睡眠を取る群に分けて比較。
実験3日目の朝には、皮下脂肪と骨格筋の組織のサンプルを採取して遺伝子や蛋白質の発現量を調べました。

 

研究結果

一晩徹夜すると皮下脂肪組織では、代謝に関与するDNAのメチル化が広範に起こっていた。一方、骨格筋組織ではこうした変化はみられなかったものの、概日リズムに関与する遺伝子の発現量が増えたほか、増減した蛋白質それぞれの役割からみると筋肉を分解し、脂肪の蓄積を促すような変化が起こっていると考えられたという。

今回の結果は、一晩でも徹夜すると危険であると強調するものではなく、Cedernaes氏は「習慣的な睡眠不足で何が起こるのかという課題を提起するもので、睡眠不足が代謝にどのような影響を与えるのかを掘り起こしたものだ」と説明しています。

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 今回の研究から、睡眠不足の影響で骨格筋組織が減少し、脂肪の貯留が促される新たな機序が解明されたと示唆されます。睡眠不足が慢性的に続くと、肥満につながるとも考えられます。一方で、この結果は実験室での人工的な環境で得られたものに過ぎず、「習慣的な睡眠不足に陥っている場合でも、それぞれの組織で今回と同様の変化がみられるかどうかは分からない」という懸念材料はあります。

必要な睡眠時間は人によって異なりますが、一般には成人で1日7~9時間の睡眠を取ることが推奨されてます。また、夜勤などで睡眠時間が不規則な人は健康的な食生活を心掛け、定期的に運動するなど良好な生活習慣を保つべきだと助言している専門家もいます。

 

ダイエットの大敵は睡眠不足!

睡眠不足になると、満腹ホルモンであるレプチンが減少するとともに、摂食ホルモンであるグレリンが増えて、太りやすい環境下に陥ります。

また睡眠不足になると、脂っこい食べ物、ポテトチップスやチョコレートなどのお菓子、パスタやパンなどの炭水化物を好んで食べるようになると言います。

つまり、睡眠不足そのものが太りやすい生活環境を作り出すという事になるのですね!

健康的な体を手に入れたい! 糖尿病になになりたくない! ダイエットしたい!

と思ったら、食事や運動よりも、まず睡眠の質について考えてみる必要がありそうですね!

*1:「American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism」7月10日オンライン版に掲載

*2:Cedernaes J, et al. Sci Adv. 2018 Aug 22.