現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

ナッツをとって“ナッツ姫”になりましょう! ~ナッツが長寿の近道だ!!~

 

ちょうど今から3年前、2014年12月5日に起きた「大韓空港ナッツリターン事件」を覚えているだろうか・・・。

“ナッツ姫”こと大韓航空の元副社長・趙顕娥(チョ・ヒョナ)がニューヨーク発・仁川行きの大韓航空機のファーストクラスに搭乗した際、皿に盛られて出されるはずのナッツを袋のまま提供されたとして激怒。動き始めていた同航空機をリターンさせて責任者を降ろし、仁川への到着を11分遅らせたという前代未聞の事件!!

 

いやいや、、、私はこの“ナッツ姫”にフォーカスしたいのでなくて、ナッツ(木の実)にフォーカスしたいのだった! 

話がそれました。反省・・・。

 

皆さん、ナッツ(ピーナッツ、アーモンド、クルミ等)は摂ってらっしゃいますか?

アーモンド、ピーナッツ、栗、クルミ、落花生などのナッツ類は、不飽和脂肪が豊富で、かつカリウムマグネシウム、カルシウムといったミネラル、それにビタミンも多く含まれる栄養価の高い食べ物であることが知られています。事実、ナッツには血管の内皮機能の改善やインスリン抵抗性を改善するという報告もあるんです。

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ナッツの摂取量が多いほど、死亡率が少ない

今回、ご紹介する研究はナースヘルス追跡研究という約7万6,000人の女性を対象とした追跡調査と、ヘルスプロフェッショナル研究という約4万2,000人の男性を対象とした追跡研究という2つの大規模な疫学研究をまとめたものです。米国・ハーバードT.H.Chan公衆衛生大学院のGang Liu氏らが、看護師健康調査(1980~2014年)と医療従事者追跡調査(1986~2014年)の参加者のうち、ベースライン時あるいは追跡期間中に2型糖尿病と診断された1万6,217例について行った試験で明らかにしたものです。

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この研究によって、

  • ナッツの摂取量が多いほど、心血管疾患や冠動脈疾患の発症率を低下させ、これらによる死亡要因を減少させるということが分かった。

  • 糖尿病と診断後、ナッツの摂取量を増加させる事によって心血管疾患発症リスク、冠動脈疾患発症リスクを低下させる事が出来た。

 

 

研究結果

延べ追跡期間は22万3,682~25万4,923人年。その間に3,336例が心血管疾患を発症し、5,682例が死亡した。

  • 総ナッツ摂取量の増加は、冠動脈疾患発生率および死亡率低下と関連した。
  • 週5サービング(1サービング=28g)以上のナッツ摂取量が多い参加者は、月に1サービング未満の少ない参加者と比較して、総心血管疾患の発生率(多変量調整後のハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[95%CI]:0.71~0.98、傾向のp=0.01)、冠動脈疾患の発生率(HR:0.80、95%CI:0.67~0.96、傾向のp=0.005)、心血管疾患の死亡率(HR:0.66、95%CI:0.52~0.84、傾向のp<0.001)、全死因死亡率(HR:0.69、95%CI:0.61~0.77、傾向のp<0.001)が低かった。
  • 総ナッツ摂取量は、脳卒中発症やがんによる死亡率と有意な関連はみられなかった。
  • 木の実(クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミア、ヘーゼルナッツなど)の摂取量が多いほど、総心血管疾患および冠動脈疾患の発生率、心血管疾患とがんによる死亡率、全死因死亡率が低下していた。一方、ピーナッツ摂取量の増加は、全死因死亡率の低下のみと関連していた(すべて、傾向のp<0.001)。
  • 糖尿病と診断後に総ナッツ摂取量を変えなかった参加者と比較して、診断後に摂取量を増やした参加者は、心血管疾患リスクが11%、冠動脈疾患リスクが15%低かった。また、心血管疾患死亡率は25%、全死因死亡率は27%低かった。
  • これらの関連は、性別/コホート、糖尿病診断時のBMI、喫煙状態、糖尿病罹患期間、糖尿病診断前のナッツ摂取量、または食事の質によって層別化されたサブグループ分析においても持続した。 

※ナッツを多く食べる人は、摂取量が少ない人にくらべて、ビタミン剤や果物、野菜の摂取が多く、かつ肥満が少なく、活動量も多いなどの交絡因子が数多くあるが、これらの因子で補正してもなお、死亡率は少ないという結果であった。

 

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ナッツの摂取によって、血糖値を有意に減少させる

2型糖尿病患者さんにおいて、ナッツを摂取することでHbA1cを低下させ、空腹時血糖値も減少させることが分かった。

なお、空腹時インスリン値はナッツ類で好影響でありました。

 

研究方法:2型糖尿病患者を対象とした12のランダム化試験のメタ解析を実施

●対象試験:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、コクランより抽出した12試験(n=450)(2014年4月6日時点まで)

●データ抽出条件:

・ナッツ類を基調とした食事(含有中央値:56g/日)と等カロリーのナッツなしの食事の比較・糖尿病患者を対象に行われた3週間以上のランダム化比較試験 

HbA1c空腹時血糖値、空腹時インスリン値、HOMA-IRの評価あり

 

研究結果:ナッツで血糖値が低下する


● ナッツ類を基調とした食事で下記指標の有意な低下が認められた。
HbA1c: 平均差  -0.07%(95% CI:-0.10、-0.03%)、p = 0.0003
空腹時血糖値: 平均差 -0.15 mmol/L(95%CI:-0.27、-0.02 mmol/L)、p = 0.03
※ナッツ食群 vs コントロール

●空腹時インスリン値、HOMA-IRはナッツ類での好影響が示されたが、有意差は認められなかった。

 

HbA1cとは・・・

通常、血糖値には食後血糖値、空腹時血糖値などがあり、採血する直前の食事内容・食事量によって血糖値は大きく変わります。一方、HbA1cは、赤血球に存在するヘモグロビン(Hb)に、ブドウ糖が結合したものです。赤血球の寿命は約4か月であり、この間に赤血球が体内をめぐり、ヘモグロビンにブドウ糖が結合します。血液中のブドウ糖が多いほどHbA1cの値は高くなり、HbA1c値は過去1~2か月の血糖コントロールの状態を反映しますので、採血前日や当日の食事の影響を受けず、1~2ヶ月間での平均的な血糖値を測定することが出来るのです。

 

www.ncvc.go.jp

 

 

ナッツ類の摂取で心血管疾患や死亡、血糖値を低下させる

ナッツの効用

  1. 心血管疾患、冠動脈疾患の発症率の低下
  2. 脳卒中を含む心血管疾患、冠動脈疾患が原因による死亡率の低下
  3. HbA1c空腹時血糖値を減少させる
  4. 糖尿病患者さんの血糖値を適切にコントロールできる

 

 

豊富なナッツを摂取して病気を予防しよう!

ナッツは、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミア、ヘーゼルナッツなどをバランスよく摂取したほうが多種の栄養素を摂取する事ができます。

 

1日の上限は70gが妥当か!?

今研究では、1日28~30gのナッツを摂取していますから、28g~30g/日を平均的にとっていれば、心血管疾患や冠動脈疾患を予防することが可能ではないかと考えられます。

一方で、ナッツは高カロリーですので(いくら良質の脂質といえど・・・)、摂りすぎは肥満の原因となるので注意が必要です。

ナッツ摂取と、血中の脂質の値の関連を調べた研究のレビューによると(Arch Intern Med. 2010;170(9):821-827)、1日70gのナッツ摂取が悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪の数値の低下と相関していました。これを加味すると、少なくとも1日70gの摂取までは許容されそうですね。

 

以前、ブログでご紹介したDASH食。このDASH食もナッツを摂取することを推奨しています。さらにDASH食も長寿に効果的であり、脳卒中を含む心血管疾患を予防するといわれています。

 

media-naranja.hatenablog.com

 

ナッツは高カロリーではありますが、飽和脂肪酸を多く含み身体の健康維持にはとても重要な働きをしてくれます。

 

皆さん、積極的にナッツを摂ってみはどうですか?

例えば、小腹がすいた時やおやつに食べる食品をチョコレートやお饅頭でなく、ナッツに変えてみるのも良いかと思いますよ。

 



 

*1:Circulation Research誌オンライン版2019年2月19日号