現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

地中海式食事法が女性の心疾患、脳卒中のリスクを低減させる!?

皆さん、こんにちは(^^)

今回は女性の病気に焦点を当てたお話をしたいと思います。

 

50代から急増する心筋梗塞脳卒中

女性の場合、40~50代で女性ホルモンが急激に減少し、閉経を過ぎた、いわゆる更年期頃から、生命に関わる重大な病気を発症しやすくなります。

特に、更年期を過ぎたあたりから、女性の死亡原因として、心筋梗塞脳卒中が、第一位、第二位を占めるようになります。

原因は、閉経による女性ホルモン・エストロゲンの減少です。

エストロゲンにはさまざまな働きがあり、動脈硬化を予防する善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を促進する悪玉コレステロールの増加を抑えることもそのひとつです。

閉経によりエストロゲンが産生されなくなることで、血液中の善玉コレステロールが減少し、悪玉コレステロール中性脂肪が急上昇し、動脈硬化が進んだり、脂質異常症を発症したりします。

さらにエストロゲンは、血管の柔軟性を維持する働きも持っていますが、それがなくなるために血管が脆くなり虚血性心疾患や脳血管疾患を起こしやすくなるのです。

 

そういえば、女優の天海祐希さんが心筋梗塞を発症されたのも、ちょうど45歳の頃だったようです…。

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今回、更年期の女性にとって、大変朗報となる論文を見つけたので、ご報告しますね!

 

果物や野菜、魚、オリーブ油、ナッツ、全粒穀物などが豊富な地中海食が女性の心疾患予防に有用とする新たな報告が、「JAMA Network Open」12月7日オンライン版に掲載されました。

この報告によると、地中海食に近い食事を取り続けた女性では、そうでない女性に比べて心疾患リスクが25%低く、こうした地中海食の心疾患予防効果には、炎症や糖代謝、肥満度といった従来の心血管リスク因子が影響していることも明らかになったそうです。

 

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地中海式食事法とは?

医学会等で以前より注目を集めているのが「地中海式食事法」です。地中海沿岸地域の食生活のことで、その食べ物や食べ方に特徴があります。

下図は「ギリシャの食品ピラミッド(Greek food pyramid)」と呼ばれるもので、ギリシャの食事ガイドラインの根幹となっています。「地中海式食事法」では、このピラミッドの下から上に上がるにつれて、摂る頻度を減らしていくのです。

 

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         日清製粉の記事より抜粋

 
地中海式食事法フードピラミッド

上に行くほど量を減らしていく。下から毎日食べるべきもの(全粒穀物・野菜・果物・オリーブオイル・乳製品)、週単位で食べるべきもの(魚、鶏肉、オリーブ・ナッツ・豆類、じゃがいも、卵、お菓子)、月単位で食べるべきもの(豚肉や牛肉)。

 

食べる頻度 食品
月に数回 牛肉や豚肉、お菓子やケーキなどのデザート
週に数回 鶏肉、卵、チーズ、ヨーグルト
毎週少なくとも2回 魚、シーフード
毎日の毎回の食事 野菜、果物、全粒粉、オリーブオイル、豆、ナッツ類、マメ科植物および種子、ハーブやスパイス
毎日 運動、誰かと一緒に食事をする
適度に飲む ワイン
毎日飲む
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たくさん食べるべきもの

「地中海式食事法」で毎日たくさん摂るべきものは、フードピラミッドの下部に示されている、全粒穀物・野菜・果物・オリーブオイル・乳製品です。

全粒穀物は、精白などの処理を行わず、糠となる種皮や胚といった部位を除去していない穀物であり、その製品としては、具体的には玄米、全麦パン、オートミールなどが挙げられます。次に多く摂取するべきものは野菜と果物です。

そして何より特徴的なのは、オリーブオイルをたくさん摂取することです。その量は1日当たり大さじ1~2杯(15~30ml)が理想的です。

オイルと聞くと脂肪が多いと思いがちですが、オリーブオイルは不飽和脂肪酸をたくさん含み、血中の中性脂肪コレステロール値を下げる役割を果たしています。オリーブオイルは、地中海式食事法の効果を実現する中心的な働きをしていると考えられていて、これにより動脈硬化の進展予防や高血圧、心疾患、脳梗塞のリスクを減らすことができるとされているのです。

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食べる量の調整が必要なもの

逆に、食べる量の調整が必要なものはタンパク質です。タンパク質として一番摂取が推奨されているものはチーズやヨーグルトといった乳製品であり、これから順に

魚→鳥→オリーブやナッツ類→卵→赤肉 の順に推奨摂取量が少なくなります。

注意するべき点は、ジャガイモはこの図では野菜に分類されず、たくさん摂ることは推奨されていないこと。また、塩分は極力控え、ハーブなどで代替するように心掛けると良いでしょう。

 WHOの健康度調整平均寿命報告(健康度調整平均寿命:一般的に健康寿命とも言われる。病気や怪我により日常生活に支障を来す期間を平均寿命から除き、健康的な生活をどれくらい出来るかということの推計値)を見てみると、上位10カ国の内4か国(イタリア、スペイン、フランス、イスラエル)の地中海沿岸国が上位にランクインしています。


 研究方法と結果

米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のShafqat Ahmad氏らは、米国のWomen's Health Study(WHS)に参加した健康な女性2万5,994人(平均年齢54.7歳)を対象に、地中海食の遵守度で3つのグループに分けて、最長で12年間追跡した。

 その結果、地中海食の遵守度が最も低い群に比べ、遵守度が中程度だった群では心疾患リスクが23%低く、遵守度が最も高い群では28%低いことが分かった。また、地中海食の遵守度が中程度の群と最も高い群を合わせると、最も低い群に比べて心疾患リスクは25%低かった。

 

この食事法の優位性に、地中海沿岸地域に住む人たちの人種による個体差が影響しているのではないかと考えた研究者たちは、非ヨーロッパに住む人たちを「地中海式食事法を実践するグループ」と「いつもの食事を行うグループ」に分けて比較しました。米国で行われた研究結果によると、地中海式食事法をしたグループでは2年間安定して収縮期血圧が平均6.4mmHg下がり、体重が1年間で平均3.1kg減少したという結果が報告されています。これらの研究から現在のところ、地中海式食事は個体差による効果の違いはないと考えられているのです。

 

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地中海食が何故いいのか!?


 地中海食に近い食事を取り続けた女性にみられた心疾患リスクの低減度は、コレステロール値を低下させるお薬の一種である、スタチンや他の心疾患予防薬を服用した場合と同程度だとしているのです。これは、本当に衝撃的な事実です! 

 高脂血症のお薬(コレステロール値を下げる作用)と言えば、クレストール、リバロ、リピトールなど。これらのお薬を飲んでいらっしゃる読者の方もいらっしゃると思います。つまり、このお薬と地中海食の効果が同等である可能性がある。という事なのです。



 地中海食による心疾患リスクの低減効果は、これまでにも報告されていますが、その理由は明らかになっていませんでした。この研究グループは今回、その理由についても検討しています。すなわち、地中海食摂取による、炎症の低減、糖代謝及びインスリン抵抗性の改善、肥満度の減少、血圧・コレステロール値の変化などにも関連していると述べています。

 

 以上の結果から、『炎症や糖代謝インスリン抵抗性のほか、血圧と脂質といった従来の心血管リスク因子が、長期にわたる地中海食による心血管疾患の予防効果と関与していることが分かった』ということが考えられます。

その上で、研究グループは「この結果は、公衆衛生分野に強力なインパクトを与えるもので、いずれは心血管疾患の一次予防に重要な結果をもたらす可能性がある」と付け加えています。

 また、地中海食には女性の脳卒中乳がんのリスクを低減させる可能性も示唆されており、この地中海食が女性の病気を撃退してくれる最高の食事療法かもしれませんね!

 

 

【参考文献】
・WHO. Statistical Information System (WHOSIS), 2002.
・Keys A et al. Harvard University Press (1980)
・Market report to April 30, 2013, from Spanish Olive Oil Agency
・Keyserling et al. BMC Public Health (2016)
・Djuric Z et al. Nutr Rev. (2011)
・Jacka et al. BMC Medicine (2017)
・Food and Agriculture Organization of the United States

・Katherine E. Paterson, et al. Stroke. 2018 Sep 20.