ただの風邪、されど風邪・・・PART Ⅳ ~インフルエンザの最新情報 これを読めば、今のインフルエンザの知識がバッチリ!~
インフルエンザについて
ただの風邪、されど風邪・・・最終回の第四弾!!
今回も、インフルエンザについて解説していきます。この風邪シリーズを読めば、今年の風邪対策、インフルエンザ対策はバッチリです!!実は今年、数年ぶりにインフルエンザ治療薬『ゾフルーザ』が販売されました。医療業界もこの時期、ざわついてるんです! 今回のシリーズでは、特にインフルエンザ治療薬に焦点をあてて、解説していこうと思います。
インフルエンザ治療薬って何? どんな薬があるの?
2018年11月現在、日本国内で販売されているインフルエンザ治療薬は、新薬も含めて5種類あります。
インフルエンザの治療には抗ウイルス薬が中心となります。従来は、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなどが使用されていましたが、2018年3月より新薬である『ゾフルーザ』が発売されました。
一般名 |
オセルタナビル |
ザナミビル |
ラニナミビル |
ベラミビル |
バロキサビル マルボキシル |
商品名 |
イナビル |
ゾフルーザ |
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供給元 |
GSK |
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投与方法 |
内服 |
吸入 |
吸入 |
点滴 |
内服 |
用法 |
1日2回 5日間 |
1日2回 5日間 |
単回吸入 |
1回 |
1回 |
1治療あたりの薬価(3割負担の場合) |
816円 |
882円 |
1,283円 |
1,864円 |
1,436円 (体重80Kg未満) |
販売開始 |
2001/2 |
2000/12 |
2010/10 |
2010/14 |
2018/3 |
※GSK グラクソスミスクライン
インフルエンザウイルスの作用機序は、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大して拡がります。従来のタミフル、リレンザ、イナビルなどは、増殖されたウイルスが別の細胞へ拡大・核散することを防いでいました。
一方、新薬であるゾフルーザは、インフルエンザウイルスが拡散する前段階である、増殖そのものを抑制することが出来る、新しい作用機序を有した薬剤です。端的に申しますと、ゾフルーザは従来のインフルエンザより効き目が早く、単回投与で治療が完結するという利便性が高いお薬なのです。
タミフルは1日に2錠、5日間にわたって飲み続ける必要がありますが、ゾフルーザは20mgの錠剤を1回2錠飲むだけで、その後の服用は必要がない。というのがメリットですので、飲み忘れ防ぐ事が出来ます。
昨シーズン最も処方されたイナビルは、服用は一度でいいのですが、吸入タイプであるがゆえに、吸引力の弱い高齢者の方や上手に吸入出来ない幼児にとっては使用しにくいというデメリットがありました。
また、薬価という値段を見てみると、最も低価格なのはタミフルです。やはり、ゾフルーザは、新薬であるが故に割高感はありますよね?
さらに、今年9月からタミフルの後発品(ジェネリック薬)が、沢井製薬より販売となりました。この後発品はタミフルの半額となります。ただ、現在このジェネリック薬を取り扱っている医療機関は少ないようです。
子供には、どんなインフルエンザ薬を使ったらいいの?
現状、残念なことに新薬のゾフルーザは体重20kg未満の小児は使用することが出来ません。
概ねの見解としては、以下のような処方をする病院が多いようです。
0歳~生後2週未満:インフルエンザ治療薬は使用しない
生後2週目~5歳未満:タミフルを第一選択
5歳~15歳未満:
①ドライシロップ:吸入剤が吸えない人や、常在の服用歴がない方は第一選択。
② 吸入剤:リレンザ、イナビル
③ カプセル:タミフルカプセル(体重37.5kg以上)
④ 錠剤:ゾフルーザ錠(確実に錠剤を服用できる人というのが原則)
15歳以上
タミフルカプセル、リレンザ吸入薬、イナビル吸入薬、ゾフルーザ錠の使用が可能
インフルエンザ薬(タミフル)による異常行動の真実
数年前、タミフルを服用した中学生が自宅療養中のマンションから転落死した報道、、、皆さん覚えていらっしゃいますか? 当時世間をにぎわせた話題です。
精神病性症状、自殺といった事象がみられたとする症例報告が相次いだのです。
しかし、米国や本邦の厚生労働省の研究結果から、『オセルタミビル(タミフル)と異常行動との因果関係について明確な結論が出ていないこと、また、抗インフルエンザ薬服用の有無や種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現する可能性がある』ことなどを踏まえ、オセルタミビル(タミフル)の警告措置を撤回し、ほかの抗インフルエンザ薬にも同様の警告文を表記するようなっています。
つまり、異常行動や精神病性症状はタミフルに限った問題ではなく、インフルエンザに感染した時期にこのような異常行動が起こる可能性がある。と結論付けています。2018年からはタミフルだけでなく、イナビル、リレンザといった他のインフルエンザ薬にも、同様の警告文が添付文書に追記されています。
こういった異常行動に対処する方法としては、インフルエンザと診断されたら少なくとも2日間は小児や未成年者を一人にしないようにすること、療養中の小児・未成年者が簡単に窓の外に出ることが出来ないよう対策を講じておくことが肝要です。
インフルエンザ薬を予防薬として投与、、、これって効果あるの!?
タミフル、リレンザ、イナビルは、インフルエンザの予防に使うことが認められています。しかし、予防薬の対象となるのは、原則以下の条件を満たす患者さんです。
① 家族など同居する人がインフルエンザにかかっていること
② かかった場合に重症になりやすい人であること(ハイリスク患者)
なので、『受験生なので、国家試験前なので・・・』という理由だけでは、原則、インフルエンザ薬と投薬することは難しいそうです。けれど、臨床医の見解は違うようで、現状で個人の居状況を鑑みて、投薬しているようです。しかし、適応外処方となるため、万一、副作用が起こっても「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはならず、補償が受けられないというデメリットがあります。
抗インフルエンザ薬には、体の中でインフルエンザウイルスが増えるのを抑える作用があります。抗インフルエンザ薬を予防的に使っていると、インフルエンザウイルスに感染しても体の中でウイルスが増えにくくなるため、結果としてインフルエンザの発症を予防できるのです。タミフル、リレンザ、イナビルを予防に用いる場合は、いずれも原則として、治療に使う量の半分を、倍の期間使用します。使用期間は薬によって異なり、タミフルは7~10日間、リレンザは10日間、イナビルは1~2日間です。あくまで予防としての使用ですので、ワクチンと同様、公的医療保険は使えず自費診療の扱いとなります。発症を予防できるのは、服用している期間だけです。注意しなければいけない事は、抗インフルエンザ薬を使い過ぎると、薬への耐性を持ったウイルスが出現する恐れがあります。ですので、使い過ぎには注意が必要かと思います。
インフルエンザに感染した場合、学校や職場に復帰するタイミングは?
少なくとも解熱しているかどうかの確認は必要です。また、解熱後はウイルス量は減少しますが、他人に感染させうる程度のウイルスは暫くは排泄される可能性があるため、発症(発熱)から5日程度経過し、かつ解熱から2日経過するくらいまでは、マスクや手洗いなどで他人にうつさないようにすることを指導していただければと思います。
まとめ
今シーズン(2018年度)のインフルエンザの流行期入りは、遅い立ち上がりであるそうです。インフルエンザはワクチン接種によって100%発症が防げるわけではありません。しかし、感染する確率を下げることができ、特に高齢者の方やハイリスク患者さんにとってはインフルエンザワクチンの接種によって重症化するのを抑制し、合併症から回避する事が出来ます。また、小児・幼児の場合は急性脳症が発症する危険性もあるので、ワクチン接種は重要であると思います。
インフルエンザ薬と聞くと、『異常行動』が頭をよぎるかもしれません。実際に、タミフルをめぐっては異常行動が相次いだため、厚生労働省が2007年に10代の患者への使用を原則禁止する措置をとりました。しかし結局、「異常行動とタミフルの服用の因果関係は認められない」という研究結果を踏まえ、11年たってようやくタミフルの使用制限は解除されました。
2018年より販売になった新薬「ゾフルーザ」は、1回投与で、しかも効き目が早いため、画期的なお薬です。また、現在販売されているのは錠剤だけですが、今後は顆粒も発売されるそうです。ゾフルーザの市場は今後さらに大きくなっていくことが予測されます。
シリーズ4回にわたってお伝えしてきた『ただの風邪、されど風邪・・・』は、今回で最終回となりました。
皆さん、兎にも角にも、風邪やインフルエンザに感染しないように日常生活に気を配ること、そして十分な休息と十分な睡眠をとるようにして下さいね!
冬が深まってまいります・・・体調にはくれぐれも気を付けて下さい!!
それではまた、健康と美容のお話の場でお会いしましょう~(^^)