現役メディカルスタッフが語る!!健康な身体と心を手に入れる極意

循環器専門病院に勤務するメディカルスタッフ(健康オタク)が、最強の身体と心を手に入れるための方法を伝授します!巷のうわさ話ではない、科学的根拠(Evidence)に基づいた健康法を医療専門家の視点から徹底的に語ります。

ただの風邪、されど風邪・・・PART Ⅲ~インフルエンザの最新情報 これを読めば、今のインフルエンザの知識がバッチリ!~

インフルエンザウイルスって、なに???

ただの風邪、されど風邪・・・第三弾!!今回は、この時期もっとも気になる、インフルエンザウイルスについて、科学的根拠を元にしてお話していきたいと思います。

しかも今年は、数年ぶりにインフルエンザ治療薬の新薬『ゾフルーザ』が発売開始となりました。このゾフルーザの最新情報も盛り込んでお伝えしていきます!

 

 

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インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染しておこる上気道感染症ですが、「一般のかぜ症候群」と違う点は、死者が出るほど重い感染症であるということです。インフルエンザウイルスには A型、B型、C型があり、ヒトに流行を起こすのはA型とB型です。インフルエンザは毎年少しずつ変化(マイナーチェンジ)を繰り返していきます。特にA型は数年から数十年単位で、突然、全く別の亜型に変わることがあります。すなわち、フルモデルチェンジして新型インフルエンザが発生するのです。「これまで感染したことがないインフルエンザ」=「新型インフルエンザウィルス」の登場です。これまでのワクチンやインフルエンザ薬では効かない病気という事になるのです。多くの人がこの新型インフルエンザに免疫をもっていないことから、感染が拡大して世界的大流行(パンデミックを引き起こす可能性があるのです。

 

インフルエンザはいつ頃から流行るの?対策の仕方は!?

インフルエンザの感染経路は、患者の咳、しぶき、くしゃみなどに含まれているウイルスによる「飛沫感染」が中心です。潜伏期は1~3日間と言われています。ですので、症状が出るのは、感染して1日~3日程経過してからです。

毎年11月下旬~12月上旬に流行が始まり、翌年の1月~3月の間に患者数が急増、4月~5月にかけて減少していきます。

 また、インフルエンザのらかん率は小児で非常に多く、死亡率は高齢者で多いという統計が出てきます。

 

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 インフルエンザは、基礎疾患(COPD、喘息、糖尿病、癌など)を持っているハイリスク患者(下記参照)、抵抗力のない高齢者にとっては大きな脅威ですが、もっとも感染しやすいのは、インフルエンザに感染経験のない小児という事になります。

 

インフルエンザと風邪との見極め方

ここで、お伝えしたいことは、風邪とインフルエンザは全く違うウイルス感染症であるという事です。

インフルエンザの症状は、①突然の発症、②38℃を超える高熱、③上気道症状(咽頭痛、咳、くしゃみ、鼻水)、全身倦怠感等の全身症状などが、あげられます。

 

高齢者の特徴

発熱は持続する微熱であることも稀ではなく、発見が遅れやすい、肺炎を起こしやすい、脱水を起こしやすい等が挙げられます。

小児の特徴

典型的なインフルエンザ症状であることが多い(乳児の場合は非典型的な場合が多い)

ひきつけや、急性脳症を発症する危険性があるので注意が必要です。

 ハイリスク患者重篤な合併症を引き起こす可能性のある患者)

・高齢者

・慢性呼吸器疾患(気管支喘息肺気腫、慢性気管支炎)

・慢性循環器疾患患者(弁膜症、心不全

・慢性腎不全患者

・免疫不全状態の患者(ステロイド抗癌剤投与中患者、HIV感染者など)

・妊婦

以上の方々は、インフルエンザに感染した場合、重篤な合併症を引き起こす可能性のあるので注意が必要です。上記のインフルエンザ症状が1つでも当てはまったり、いつもの風邪と違う!!」と少しでも感じたら、お近くの医療機関を受診することをお勧めします。

 

インフルエンザワクチンって、効果あるの!?

 

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この時期、『インフルエンザワクチン打ったのに、インフルエンザにかかったよ~・・・』と仰られる患者さんのお声をよく耳にします。

実はその通りでして、インフルエンザワクチンを接種しても、100%インフルエンザの感染から身体を守る事は出来ないのです。

季節性インフルエンザワクチンに含まれるウイルス株はそのシーズンに流行すると予測されるウイルスを使用して製造されます。ですので、ワクチンに含まれている株とその年の流行株が異なった場合には、ワクチンの効果は減少してしまい、結果的にインフルエンザに感染してしまうとういう現象を招く訳です。

じゃあ、インフルエンザワクチンって、効果ないじゃん??と、思いますよね!しかし、下記に示すような厚生労働省の研究結果があります。

 65歳以上の健常な高齢者に対しては約45%の発症を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。また、6歳未満児では、ワクチン接種によりインフルエンザ流行期における発熱リスクを優位に減少、ワクチンの有効率は22~25%であったと報告されています。

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つまり、『インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザの発症する可能性を減少させ、発症しても重症化や合併症を防ぐことが出来る、また、インフルエンザによる死亡率を低下させることが出来る』と述べています。あくまで確率論ですが、ワクチンを接種した方が良いのは間違いないと思います。

 

インフルエンザのワクチン接種は、ほとんどが任意接種(自己負担による医療機関での接種)ですが、下記に示す方は定期接種となります。

  • 高齢者(65歳以上の方)
  • 60~64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方
  • 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方

いわゆる、ハイリスク患者さん(感染すると死亡する確率が高くなる)の場合は、定期処方で対応が出来ます。

 

乳児・小児のワクチン接種スケジュール
  • 生後6ヵ月以上で12歳:2回接種します。10月ごろに1回目を接種し、およそ2~4週間(できれば4週間)あけて2回目を接種します。
  • 13歳以上は通常1回接種ですが、2回接種することもできます(接種間隔はおよそ1~4週間)。

流行前に2回接種が終わるように、1回目は10~11月、2回目は11月中に接種するのがおすすめです。

 

1970年頃は、インフルエンザの予防接種は学校での集団予防接種を行っていました。それは、学童が集団生活する学校からインフルエンザは流行始め、社会へと拡がってゆくという考え方があったからでした。また、その当時はインフルエンザは「冬に流行するカゼ」程度にしか考えられていませんでした。しかし、80年代に入り、インフルエンザワクチンには効果がないのではないか?というワクチンに否定底な考えや、インフルエンザのような感染症は「個人の責任で防止すべき」であるという個人防衛の見解から、1994年の予防接種法の改正に際して、集団接種から任意接種と変更になった。という経緯があります。これは、ワクチンが効かないから集団接種から任意接種になったという理由ではなく、日本の社会的背景によるものだと考えられています。

 

ワクチンの接種時期はいつ頃がベスト?

ワクチンが十分な効果を獲得するには個人差が大きいです。ただし接種後約2~4週間後から。その維持する期間は約5~6か月と言われています。

流行予測時期とワクチンの有効期間を一致させるために、接種時期は10月下旬から12月中旬が望ましいと言われています。つまり、今の時期がワクチン接種にはベストタイミングなのです!!

 

 妊婦さんのインフルエンザワクチン接種について

妊婦さんにとっては、「インフルエンザのワクチンを接種だいじょうぶかなぁ・・・」とワクチン接種を不安に思っているかたも多いと思います。結果から申しますと、妊婦さんでも摂取しても直接的な影響はないと考えられています。ワクチンは不活化ワクチンですし、これまで接種により胎児に影響があったというデータもありません。重大な先天異常、早産、在胎齢に対する過少体重などのリスクはなかったとの報告があります。
ただし、妊娠の初期段階は不安定な状態であり、インフルエンザワクチン接種の有無にかかわらず、流産など妊娠経過に異常を来しやすい時期です。よって、この点について妊婦さんには十分注意が必要だと思います。

Pasternak B et al. Risk of adverse fetal outcomes following administration of a pandemic influenza A(H1N1) vaccine during pregnancy. JAMA. 2012 Jul 11;308(2):165-74.

 

ワクチン接種以外にインフルエンザを予防するために、日常生活で気を付けることは?

  • マスク:ウイルスをブロックするのであればN95のマスクが有効です。しかし一般生活の中では使い勝手が悪く、実際的ではりません。飛沫感染予防という点では不織布製マスクが使いやすいと思います。
  • うがい:うがいによって上気道感染症全般の頻度が低いというデータがみられますが、インフルエンザウイルス感染について明らかな有効性が示されたデータははありません。しかし、口腔内の湿潤を保ち、清浄にするという意味では有効であろうと思います。
  • 手洗い:手洗いでインフルエンザ感染が減少したとういうエビデンスは多くはありません。しかし、上気道感染症全体の頻度が低下したというデータがあります。手洗いは感染症予防の基本であり、日常の一般的な予防手段として重要です。
  • 加湿器:湿度が高い方がウイルスの広がりを抑えるというデータもあるようですが、これによってインフルエンザウイルスが激減したというデータはないと思います。しかし、加湿することで口腔内や気管のコンディションが良くなることから、気道感染症全体の感染機会を下げるという効果はあると考えられます。

 

まとめ

 今シーズン(2018年度)のインフルエンザの流行期入りは、遅い立ち上がりであるそうです。インフルエンザはワクチン接種によって100%発症が防げるわけではありません。しかし、感染する確率を下げることができ、発症しても症状がひどくならないこと、また特に高齢者の方やハイリスク患者さんにとっては、ワクチンの接種によって重症化するのを抑制したり、合併症によるリスクを低減してくれます。また、小児・幼児の場合は急性脳症が発症する危険性もあるので、ワクチン接種は重要であると思います。

 

次回は、『ただの風邪、されど風邪・・・PARTⅣ』

インフルエンザ第二弾についてお届けする予定です。皆さん、超~気になっているインフルエンザの新薬ゾフルーザについてもお話してきますね!

 

それでは皆さん、

十分な休息と十分な睡眠をとって、体調を整え、この冬を乗り越えましょう~!